「物価高、節約で補うにはあまりに大きい」 キヤノン20年ぶりベア
キヤノンの田中稔三副社長は30日の記者会見で、従業員の基本給を一律で引き上げるベースアップ(ベア)を20年ぶりに実施した理由について、「物価上昇を生活費の節約などで補うには、あまりにも大きすぎると判断した」と述べた。
同社は今月、全従業員約2万5千人の基本給を一律月7千円引き上げた。
前回ベアをおこなったのは2003年。05年に仕事の役割と成果に応じた給与制度を取り入れて以来、ベアは実施してこなかった。しかし、エネルギーや食品の急激な価格上昇を受けてベアを決めたという。
通常の昇給と合わせると3・8%程度の賃上げとなり、田中氏は「いま日本で言われている物価上昇率に見合う数字」と説明した。
この日発表した22年12月期決算(米国会計基準)は、売上高が前年比14・7%増の4兆314億円と、5年ぶりに4兆円を超えた。本業のもうけを示す営業利益は同25・4%増の3533億円、純利益は同13・6%増の2439億円だった。
海外での売り上げが8割を占める一方、生産は国内への回帰が進んでいたため、円安が業績に追い風となった。カメラ、医療機器、半導体製造装置の販売も好調だった。
23年12月期の見通しは、売上高が同6・3%増の4兆2870億円、純利益が同10・7%増の2700億円とした。(伊沢健司)
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- 【視点】
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