「私は脳腫瘍」5年生存率16%の現実 佐々涼子さんは夜明けに思う
終末期がん患者との日々をつづった『エンド・オブ・ライフ』などで知られるノンフィクション作家の佐々涼子さん(54)が、昨年末に悪性の脳腫瘍(しゅよう)と診断され、闘病しています。最近は、重い病気の子どもたちが過ごす「子どもホスピス」に通って取材をするなど、いのちの現場を見つめてきた文筆家。命にかかわる病の当事者となった今、何を思うのか。通院の合間にインタビューに応じていただきました。
佐々さんは今、横浜市の自宅から都内の病院へ毎日のように電車で通い、放射線治療を受けている。脳を手術した時に外した右側の頭蓋骨(ずがいこつ)の一部はそのままの状態で、頭を保護する専用の帽子をかぶって外出する。会社員の夫、渡邉健夫さん(53)がいつも付き添い、その手を握り、ふらつきに備える。渡邉さんは「この年齢になって、夫婦でゆっくり手をつないで歩く時間ができるとは思いませんでした」と照れ笑いで明かす。病気の知らせに急きょ、単身赴任先のインドネシアから戻った。
〈残念ながら私の病気は悪性の脳腫瘍。待ち時間は延長線に入りました。でも、何ひとつ憂いはなくて(以下、略)〉
そんなツイートで深刻な病を気丈なメッセージとともに公表したのは昨年12月13日。
手術後の告知に動揺「私は生き残ってしまった」
11月下旬、持病の頭痛に耐えかね近所のクリニックへ駆け込んだ。すぐに大きな病院へ移され、3日後の開頭手術で右の側頭葉にできたゴルフボール大の腫瘍の8割を摘出した。12月上旬、病理検査で確定診断が下った。5年生存率16%、患者の半数が亡くなる「生存期間中央値」は1年と告げられた。
「術後はずっと頭がボーッとしていて、衝撃よりも『うそでしょ?』という気持ちが今でも強いです」
淡々と語る佐々さんだが、腫…
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