山に親しむ小中学生に写真家石川直樹さんが講演 写真展も
エベレストなど世界の山々を巡って撮影を続ける写真家の石川直樹さん(45)が、山梨県南アルプス市立芦安小学校・中学校の子どもたちに登山の魅力を語った。学校登山が伝統の同校で伝えたかったこととは――。
「富士山はいつも外国に遠征する前に登ります。季節や時間、場所、自分の状態によって毎回新しい世界と出会えますよ」。さらに子どもたちに「みなさんは何度も読み返すお気に入り本はありますか」と呼びかけ、「富士山もそれと同じ。登るたびに発見がある」と、山登りの魅力を表現した。
石川さんは1977年、東京生まれ。登山に目覚めたのは中学生の頃だった。釣りをしていた川の源流を好奇心でさかのぼってみたら、山頂にたどり着いた。「水の源は山だったんだ。山って面白い」
2000年に地球縦断プロジェクトに参加し、北極点から南極点までを人力で踏破。23歳だった01年には世界7大陸最高峰の登頂を当時最年少で達成した。このほかにも国内外を旅して多数の写真集や絵本を発表している。
講演は24日にあった。昨年6月から市内の芦安山岳館で石川さんの写真展が開かれており、市が「地元の子どもたちに体験を話してほしい」と石川さんを招いて実現した。子どもたち25人が耳を傾けた。
石川さんは会場正面の大型モニターに著書の写真絵本「富士山にのぼる」を映しながら、子どもたちに、真冬の富士山登山への挑戦の様子を読み聞かせした。
さらに、ヒマラヤの世界3位の高峰カンチェンジュンガ(8586メートル)に昨年登頂した時の動画や、ふもとに暮らし、登山家のガイド役を務める少数民族シェルパ族の生活も紹介した。
次々とモニターに映し出される美しい画像や石川さんの素朴な語り口に、子どもたちも身を乗り出して聞いていた。
芦安小は児童21人の小規模校。南アルプスの自然に囲まれた環境をいかし、1、2年生が学校林の下草刈り、3、4年生が夜叉神(やしゃじん)峠の登山など、独自の学習活動を採り入れている。5、6年生は標高2200メートルの北岳の山小屋まで登山するのが恒例だ。隣接する中学校に進むと、標高3193メートルの北岳山頂登山にも挑戦する。
4年生の中沢来愛(くれあ)さんは「お話を聞いて山に登るのが楽しみになった。海外の山や人の暮らしも見てみたい」と目を輝かせた。
講演後の取材に石川さんは「芦安にはかつて多くの登山案内人がいて、ヒマラヤのシェルパと共通する部分もあった。子どもたちにも山と人びとの暮らしにさらに興味を持ってほしい」と語った。
石川さんの写真展「ヒマラヤとシェルパ」は、南アルプス市芦安山岳館(水曜休館)で3月5日まで開かれている。(米沢信義)
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