関西有数の鉄器製造拠点の可能性 西宮のビール工場跡

真常法彦
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 兵庫県西宮市津門大塚町のアサヒビール工場跡地で続く発掘調査で、県教育委員会は、鉄器の製造に使われた工具や、鉄を精錬していたことを示す遺物が数多く見つかったと発表した。県教委は「関西有数の大規模な鉄器製造拠点だった可能性がある」とみている。

 工場跡地は県立西宮総合医療センター(仮称)の建設予定地。県教委は昨年11月、跡地北側から古墳時代前期~後期(3世紀後半~6世紀)の円墳2基と方墳6基が見つかったと発表。1月27日の発表では、その後の調査で南側から新たに古墳時代中期~後期(5世紀前半~6世紀)の方墳2基が見つかり、33棟の竪穴建物跡も見つかったと明らかにした。

 竪穴建物跡からは、矢尻や鉄製の武器とみられる遺物のほか、鉄器を研ぐ砥(と)石、精錬時に炉を高温にするため空気を送るふいごの一部が出土。鉄の精錬で生じる不純物・鉄滓(てっさい)も30個以上見つかった。新たに見つかった2基の方墳はこの建物跡に近く、武器や農具などの鉄器を製造していた集団のリーダーが埋葬された可能性があるという。

 古墳周辺からは大量の土器も出土。朝鮮半島で作られた瓶(かめ)や、朝鮮半島の製法をまねて作ったとみられる土器も見つかった。

 県教委によると、鉄器製造の技術は弥生時代に朝鮮半島から日本に伝わったとみられる。県教委は「朝鮮半島の影響を受けた鉄器製造の遺物や土器などの発見は、当時の国際交流を考える上で貴重な発見」としている。

 一般向け現地説明会は2月4日午前10時~正午、午後1時~3時の2回、発掘現場で行われる。無料。駐車場がなく、県教委は公共交通機関の利用を求めている。問い合わせは現場事務所(0798・22・8588)。

 3月5日まで、西宮市立郷土資料館(同市川添町)で発掘調査の内容を伝えるパネル展を開くほか、2月7日~28日には県立考古博物館(播磨町大中1丁目)で出土品の展示を行う。いずれも無料。(真常法彦)

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