琵琶湖の「水止めたろか」 滋賀VS.京都 水に流せぬ、背水の叫び
まだまだ勝手に関西遺産
「琵琶湖の水止めたろか」。滋賀人の殺し文句は魂の叫びである。京都・大阪ばかりが関西じゃない。聞いてんのか、府民(記者含む)め。
滋賀は近畿にある。まぎれもなく存在する。
けれど、県庁所在地・大津のサービスエリアに行った記者(大阪出身)の目に飛び込んできたのは――。
京都推しの数々
八ッ橋、漬物、舞妓(まいこ)グッズ。店に並ぶのは京都土産だらけ。京美人のイラストが描かれた菓子「夕子」推しの客が多く、センターにドーン。
滋賀が京女に乗っ取られている。
入り口の行列に近付くと、ん? このにおいは……。
551の豚まん。大阪か!
お~い。滋賀はいずこへ。滋賀原産の日野菜の漬物はあるが、なんと京都ブランド。迷子を探す気持ちで見回す。
ついに見つけた。奥まったコーナーに。
何やら極太の筆文字で書かれている。
「水止めたろか」
県民の本音
Tシャツ、靴下、タオル、コースター、おみくじ、ステッカー。
どこで着たらいいか、どこに貼ったらいいか分からないが、あらゆるグッズに刻まれる県民の本音。
店によると、ここは愛知や東京方面から京都観光に来た客の通り道らしい。なるほど、だから京都土産が売れる。
けど、もやっとする。滋賀の身になると言いたくなる。
「♪そろそろホンマに止めたろか!/滋賀県舐(な)めたら止めたろか」
あふれる思いは歌に。「琵琶湖の水止めたろか音頭」として、バンド「東狂アルゴリズム」が歌う。
作詞作曲した滋賀の佐佐木春助さん(44)は「滋賀は関西じゃないとか、散々のけ者にされて。ギャグでなく事実です」。
名所の比叡山延暦寺さえ京都と誤解される滋賀にとって、水こそが武器。
巨大湖に交通を妨げられようと、我は湖(うみ)の子。近畿の水がめブランドはやはり頼りになる。
「♪京都と喧嘩(けんか)になっても これさえ言ってりゃ絶対勝てるぜ」
返り討ちにあっても
5年ほど前からはプロ野球独立リーグの地元球団「滋賀GOブラックス」(活動休止中)応援歌の原曲にも使われてきた。
「歌うのはサヨナラとかここぞの時」。球団ファンの山岡淳さん(38)は胸を張る。
京都に通学していた中高時代、京都や大阪の級友から「県民」とあおられた身。湖の水量調節地を視察する「水止めたろかツアー」も敢行した自称滋賀過激派にとって、欠かせないパワーワードだ。
ただ、痛恨の弱点が。
試合相手は石川や福井など北陸勢で琵琶湖の威光が通じない。
「止めてもいいぞ」「サンダーバード止めるぞ」。返り討ちに遭う。
そもそも、湖の水を止められるのか。
新聞にまさかの記事
朝日新聞をめくると、滋賀県版に、湖の水を止められ、驚く京都人の描写が。
おおっ。
でも「この記事はフィクションです」と注釈付き。
朝日新聞がフィクションの記事で伝えたかったこととは? 真実が分かった時、滋賀人の決断は……。
社会風刺のための「虚構新聞…
- 【視点】
実家(滋賀県)に戻ったところ台風で東京に帰れなくなり、検索していて記事を見つけました。この「琵琶湖の水」のジョークですが、正直なところ私はけっこう違和感があります。もちろん正確なことはわかりませんが、外部に対する観光目的の演出以外で、この言
- 【提案】
私は京都府出身ですが、京都市ではありません。ちょっと南。電車で30分ほどの雅な市街に出るときは「京都行ってくる」という微妙な距離感で、滋賀県の皆さんに近いかなと勝手に思ってます。ちなみに琵琶湖からではない木津川が流れ、京都市に対して止めるの