「東京五輪の信頼失墜させた」 AOKI前会長に懲役2年6カ月求刑
東京五輪・パラリンピックをめぐる汚職事件で、大会組織委員会の元理事に賄賂を渡したとして贈賄罪に問われた紳士服大手「AOKIホールディングス」側の第2回公判が1日、東京地裁であった。検察側は「東京五輪を私利私欲のために利用し、五輪の公正な運営に対する国内外の信頼を失墜させた」とし、前会長の青木拡憲(ひろのり)被告(84)に懲役2年6カ月を求刑した。
前副会長の青木宝久(たかひさ)被告(77)には懲役1年6カ月、前専務の上田雄久(かつひさ)被告(41)には懲役1年を求刑。弁護側は執行猶予付きの判決を求め、結審した。判決は4月21日。
検察側は論告でまず、組織委元理事の高橋治之被告(78)=受託収賄罪で起訴=の立場について、五輪の公共性や公益性の高さから「みなし公務員」と規定されており、「公務員と同様の高い廉潔性を求められていた」と指摘した。
そのうえで、青木前会長らは約4年半にわたり、大会スポンサーへの選定や公式商品の早期承認、追加協賛金の減額などの便宜供与を高橋元理事に繰り返し依頼しており、「貪欲(どんよく)で執拗(しつよう)な犯行」「五輪という商機を逃さないために手段を選ばなかった」と批判した。
検察側「極めて不公平な特別扱い」
高橋元理事の働きかけでAOKI側が依頼の多くを実現させた一方で、組織委から断られてスポンサーになれなかった企業があったことなどをふまえ、「極めて理不尽で不公平な特別扱いだった」とも指摘した。
3人の役割については、「創業者としてAOKIを実質支配していた」青木前会長が「犯行を終始主導し、責任は最も重い」と述べ、求刑に差をつけた。
一方、AOKI側の弁護人は最終弁論で、「高橋元理事が私的利益を得たくて持ちかけたスポンサー契約の提案が契機だった」と主張した。3人は起訴内容を認めており、「個人的な利益を得ていない」点も強調して情状酌量を求めた。
起訴状などによると、青木前会長らは2017年~22年、スポンサー選定などで便宜を受ける見返りに、高橋元理事が代表のコンサルタント会社「コモンズ」に計5100万円の賄賂を送金したとされる。AOKI側の起訴分は、贈賄罪の公訴時効(3年)で2800万円となった。(川嶋かえ)
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