第2回「俺たちのボスは誰だ?」 柳澤秀夫さんはNHKで何度も自問した

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聞き手 編集委員・後藤洋平
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 ジャーナリストの柳澤秀夫さん(69)は1977年にNHKに入局し、外信部(現国際部)を経て解説委員、「ニュースウオッチ9」で初代メインキャスターを務めるなどNHKの看板記者だった。政治との距離が取りざたされる会長人事はどうあるべきか、公共放送に携わる人たちがどういった意識で働くべきなのか。現在はフリーの立場で活動する柳澤さんは古巣をどう見ているのか、話を聞いた。

 やなぎさわ・ひでお 1953年、福島県会津若松市生まれ。早大卒業後の77年にNHKに入局し、横浜、沖縄放送局を経て外信部でカイロ支局長などを歴任。湾岸戦争などを取材した。18年に退局。現在は「大下容子ワイド!スクランブル」「サタデーステーション」などに出演中。

 ――3年に一度のNHK会長人事で新会長が就任しました。今回に限らず、政治の声が反映されるとも耳にします

 ええ。放送法は経営委員会が会長人事を担うと定めているものの、どうしても実際には官邸の意向が反映されるのではないかとは感じています。NHKに関わりのあった者からすると、それが不文律というか常識になってしまっています。

ボスは会長でも、ましてや総理大臣でもない

 ――それはなぜでしょうか

 公共放送であるNHKは、予算を国会に握られているという大前提があります。一にも二にも、全てが予算。予算を国会で通してもらわないと始まらない。それも、広く受信料を納めていただいているので、全会一致を目指すことは必須なんですよね。国会は国民の代表の集まりですから、そうすることが国民の支持を得ていることを示す分かりやすい方式なのです。

 でも、僕は公共放送で働く身として、つくづく考えてきたんだよね。「俺たちのボスは一体誰なんだ?」って。

1月に就任した稲葉延雄氏を含め、NHK会長は外部からの登用が続いています。柳澤さんは「決していいことではない」と語ります。それによってNHKが見失いかねないものとは。

 俺たちのボスは会長ではないし、ましてや総理大臣でもない。その後ろにいる多くの国民こそが、NHK職員たちのボスなんです。「本当のボスに恥じることのない働きを、きちんと出来ているのだろうか」ということを絶えず考えていなければいけない。

 だからNHKの中にいながら…

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