第3回「NHKは文化そのもの」「民放より…」安住淳議員が語る古巣の真価

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聞き手・構成 編集委員・後藤洋平
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 立憲民主党国会対策委員長安住淳衆院議員は、1985年にNHKに就職して政治部などで記者を務め、93年に退職して政界に転じた政界屈指のNHK通として知られる。NHKの現状や、NHKに関する他のメディアによる報道、会長人事などについてどう考えているのか聞いた。

 あずみ・じゅん 1962年、宮城県石巻市(旧牡鹿町)生まれ。96年の衆院選で初当選し、9期目。現在、立憲民主党の国会対策委員長を務める。

 ――現在のNHKをどう評価していますか

 まず、放送媒体を評価するにあたっては本来、アウトプットされている番組に対するものと、組織内部に対するものをきちんと分けないといけないと思うんです。

 NHKを語る人々の多くが、それを勘違いしているように感じる。組織内部での争いごとが面白おかしく伝わって、それでNHK全体を評価づけている印象です。でも、そんな争いごとは1万人規模ぐらいの会社なら、NHKに限らずしょっちゅうあるものです。そんなことよりも番組の中身で判断しないと。

 そういう意味でいえば、NHKの番組には報道の他にもドラマやエンターテインメントも含めて色々あるけれど、全体を見渡して質が落ちたとは特段思わないんですよね。

番組の質で評価しなければかわいそう

 ――会長人事については?

 会長だって、極論すればどなたでも別に構わないんです。アウトプットの中身が問題にならなければね。

 報道の中立性が保たれているか。クオリティーの高いドラマを作れているか。「クローズアップ現代」に象徴されるように、ジャーナリスティックに社会の色んなひずみにきちんと光を当てているのか。前田(晃伸〈てるのぶ〉前会長)体制下で、これまでの会長時代と比べて悪くなったかというと、そうではないと思う。籾井勝人元会長(14~17年)は前田前会長に比して、政治的な理解が疎かった人だったと思うけど、(番組の)クオリティーが下がったかというと、そうでもない。そして前田前会長は、(過去の会長と比べて)政治と距離が近いわけでもない。そういう意味での「事件」は起きなかったと思いますよ。

 番組の質と、内部からの会長に対する評価というのは別なんですよね。紅白の質が落ちたのか、スポーツ番組の質が落ちたのか、自然を扱う番組はどうなのか、大河は本当にいいのか、報道のニュースはどうなのかというところで評価しないと、あの組織はかわいそうですよ。

 本当は、放送全体のことを理解して、「なるほどね」と思うような人が会長になってくれるのが一番いい。放送のプロでなきゃ。組織機構をいじくるのはいいんだけど、組織が将来持続性をもって、専門集団を育てられるかというのがポイント。

 前田前会長について一ついえることは、職種の垣根を越える交流人事をやったことはいいと思うんだけど、それが本当に専門性を必要とする番組制作や報道やアナウンスという特殊性を伸ばせたのかという点。銀行とは違って、NHKでは放送のプロフェッショナルを育てなきゃ元も子もない。放送の世界では専門性はやっぱり必要だよね。記者はアナウンスができないしアナウンサーは紅白歌合戦を作れないから。営業をやらせるのもいいけど、それはある種、丸の内の感覚であって、放送文化って全然違うと思いますよ。

安住さんはNHKが民放より優れている点を次々に指摘します。そのコンテンツをNHKがネット展開していくのは「止められない」とも。政治家として、NHKと政治との距離についても本音を語ります。

「ぬいぐるみが出てくる天気予報なんて…」

 ――今後、受信料の値下げや衛星波を減らすという課題が待っています

 それはね、NHKに受信料を…

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