ロシアが侵攻したウクライナでは、国外に逃れる人のほかに、東部ドンバス地方といった地域から、被害が比較的少ない西部などに避難する「国内避難民」も数多くいます。この「国内避難民」は世界各地で増えており、これまでの人道支援だけでは立ちゆかなくなっているといいます。どういうことなのでしょうか。国連事務次長補で、国連開発計画(UNDP)危機局長の岡井朝子さんに聞きました。
――UNDPは昨年、「国内避難民」をめぐる新たなアプローチをまとめた報告書を発表しました。なぜ「国内避難民」を取り上げ、どんな支援を検討しているのでしょうか?
昨年11月に「国内避難民対策の方向転換を:解決に向けた開発アプローチ」を発表しました。「国内避難民」問題の深刻さは増しています。みなさんがあまり知らないところで、いわば「隠れた危機」が進行しているのです。難民・国内避難民も含め、避難を余儀なくされた人は、特にこの数年は毎年記録を更新し、2021年末時点で10年前の2倍以上にあたる約9千万人が移住を強いられています。そのうち、「国内避難民」は約6割を占めているのです。
22年にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、さらに状況は悪化しています。ヨーロッパへ避難した人が約800万人、ウクライナ国内での避難民は約600万人と推計され、計1400万人もの人びとが新たに移動を強いられたのです。
国際社会の対応はこれまで、短期的な視点からの緊急人道支援が主流でした。ただ、「国内避難民」の場合、本来は政府が自国民の福利厚生、雇用などの対策をとる責務があります。しかし、国際社会からの人道支援は必ずしも国内の政策に反映されることなく、いつまでも外部的な要素として残り、避難が10年、20年と長期化することが常態化していました。
「国内避難民」のこうした実態を踏まえ、グテーレス国連事務総長は3年前、「開発の視点」からアプローチする対応に変えることを指示。データや検証結果を集め、UNDPを含む開発機関はどう取り組むべきかを検討し、今回の報告書にまとめたのです。
蓄積生きたウクライナへのデジタル支援
――ウクライナでの開発支援とはどんなものですか?
例えば、14年のクリミア半島やウクライナ東部へのロシアの侵攻後から、すでにUNDPはウクライナ復興支援を強化していましたが、新型コロナウイルスのパンデミックが起き、オンラインで基本的な行政サービスを展開したいという政府の要請を受け、デジタル化支援を進めてきました。これがロシアの侵攻後、内外への避難民に対する政府の初期対応を支えることになりました。
戦争の勃発直後は、着の身着…
- 【提案】
【なぜウクライナの避難民は国内に戻るのか】昨年ウクライナに取材に行きました。またイギリスではウクライナ避難民の方に取材しました。ウクライナ避難民の方は、英語が話せる方と話せない方に取材しましたが、そこには大きな違いがあると思いました。英語が

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