亡き母の香水、ひとり残された父のため探して 幸せな結末に笑い泣き

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若松真平
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 「母さんが生前つけていた香水を買ってきてくれないか」

 昨年12月11日、北海道に住むMさん(43)は、近くでひとり暮らしをしている父(76)からそんな依頼を受けた。

 「母さん」とは父の妻で、一昨年に71歳で先立ったMさんの母だ。

 娘から見ても2人はまさに「おしどり夫婦」だった。

 母に一目ぼれした父は「付き合ってください」より先に「結婚してください」と申し込んだそうだ。

 子ども4人を授かってからも、いつもソファでテレビを見ながら寄り添っていた。

 そんな風景が当たり前だったMさんは、友人たちの複雑な家庭環境を知るにつれて「うちは特別に仲がいいんだ」と気づいたくらいだ。

 がんと診断され、2年8カ月の闘病を経て旅立った母。

 生前、「私がいなくなった後の父さんだけが心配」と話していた。

寝付けない夜に使ってみたら

 香水のことを頼まれたのは、母との死別から1年ほど経ったころ。

 父の誕生日を祝うために家族が集まり、Mさんが食事の準備をしていた時だった。

 飲み物や刺し身を買い足そうと思い、母が使っていた鏡台で身だしなみを整えていた時に声をかけられた。

 「寝付けない夜、鏡台に置いてあった香水をタオルに付けてベッドサイドに置いたらよく眠れたんだ」

 まだ瓶の中には半分以上残っているそうだが、なくなる前に予備として持っておきたいとのことだった。

 ようやく慣れたであろうひとり暮らしの中、香りで母の記憶を思い出しながら眠る父を思い浮かべた。そして思った。

 「廃盤品でも個人輸入でも、なんとしても同じものを手に入れてやるぞ」

 香水の名前を確かめようと現物のありかを聞くと、目の前の鏡台に置かれていた。

 半分ほど減った瓶のラベルを…

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