お墓を守る人が誰もいなくなるとしたら? 「墓じまい」という選択肢
土曜日の朝刊別刷り「be」で連載している「知っ得なっ得」。今回のテーマは「墓じまい」です。少子化・核家族化で、お墓の維持管理が難しい時代です。身近な場所にお墓を移すにはどうすればよいのでしょうか、自分の代わりに故人を供養する方法はあるのでしょうか。金太郎と得子が話し合いました。
金太郎(かねたろう) この欄で以前、実家じまいについて話したけど、こんどはお墓?
得子(とくこ) 実家の近くに、亡くなった親や先祖のお墓があることが多いでしょう。だけど「実家にほとんど帰省できない」「墓を維持管理する親戚もいない」といった理由で、「いま自分が住む都市圏にお墓を移したい」などと考える人が増えている。これも少子高齢化、東京一極集中の影響ね。
金 最近、年賀状をやめる「年賀状じまい」もあるらしいけど、何でも「しまう」世の中になったねえ。
得 正確にはお墓を「しまう」のではなく、お墓のお引っ越し。これを改葬という。厚生労働省の調べでは、10年前の改葬は年に約7万件だったのが、現在は約12万件に増えている。
金 移すのは一般的には墓石ではなく、納められている遺骨だよね。
得 そう。ただ海などへの散骨を選ぶ人もいて、その場合は、お墓そのものがなくなることになる。
金 どんな時、墓じまいを考えるものなのかな?
得 都市圏に住む人以外にも、「我が子にお墓の維持管理の負担をかけさせたくない」と考える人や、ある家族の子どもが1人で、その人が結婚相手の家のお墓に入るつもりなら、実家の墓じまいを考えるかも。
金 まず最初にやるべきことは?
得 墓じまい以外に選択肢はないのか、よく検討することね。
金 まずそこから?
得 そうよ。というのも、お墓は長子が引き継ぐ相続財産と考えている人が多いけど、お墓は祭祀(さいし)財産、お墓を引き継ぐ人は祭祀承継者といって、3親等までの親戚が承継できる。
金 ある日、久しぶりに亡親の墓参に行ったら、長兄が知らないうちに墓じまいしていてモメた、なんて話も。
得 もし親族間で意見が割れたら、分骨という手もある。親戚との相談や根回しは忘れてはいけない。
金 承継するのは、そのお墓の使用権だよね。
得 その通り。よく検討したけど、やはりお墓を承継する人がいないなら、そのことは現在の墓地管理者、例えばお寺に「お墓を移さざるを得ない」と伝える時の説得材料にもなる。
金 スムーズに離檀(りだん、檀家〈だんか〉をやめること)するためにも、それは大事だ。
得 そうね。いざ墓じまいとなれば、今のお墓は撤去して更地にし、墓地管理者に使用権を返すことになる。
金 お墓を自宅近くに移すと決めたら、まず何からやるの?
得 地方から都市圏にお墓を移すような場合、墓地管理者は代わる。こうした時、今のお墓がある自治体から改葬許可を取る必要がある。具体的には、地元自治体から「改葬許可申請書」、お墓の管理者から「埋蔵証明書」、引っ越し先のお墓の管理者からは「受入証明書」をもらい、これらの書類を今のお墓がある自治体に提出して「改葬許可証」を発行してもらう。
金 もろもろ経費もかかりそう。
得 あくまで場合によるけど、お墓の魂を抜く「閉眼供養」に数万円、お寺に払う離檀料として数万円から約30万円かかることもある。遺骨の取り出しやお墓の撤去などは、ふつうは石材店にお願いするものだけれど、これも一般的には数十万円かかる。
金 もちろん、改葬先のお墓を買うにもお金はかかるよね。
得 そうね。最近、都市圏を中心に、永代供養墓や納骨堂など様々なタイプのお墓が増えている。こうしたこともこれから説明しましょう。(構成・稲垣直人)
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