第1回大爆発で砕けた古代ガラスの器 新米館長がみせた、とっさの好プレー

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ベイルート=国末憲人
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 古い街並みと社交文化から「中東のパリ」と呼ばれるレバノンの首都ベイルートの一角、地中海を望む高台に、多数の著名人を輩出したベイルート・アメリカン大学(AUB)が位置している。そのキャンパスのれんが造り2階建ての建物が、付属の考古学博物館だ。

 大学開学の2年後にあたる1868年、駐キプロス米国領事から個人コレクションの寄贈を受けて開館。周辺ではカイロ、コンスタンチノープル(現イスタンブール)に続く3番目の考古学博物館だった。各地の遺跡の出土品を集めて規模を拡大し、現在の収蔵品数は約2万2千点。ベイルート国立博物館と並び、この国を代表する博物館として知られている。

 2020年8月4日、ベイルート港に保管されていた硝酸アンモニウムが大爆発を起こした。死者200人以上、負傷者は6千人を超え、災害史に残る出来事となった。

 被害は広範囲に及んだ。博物館は現場から3キロあまりで、被害を受けてもおかしくなかった。事件後の交通規制で職員らがキャンパスに近づけず、状況はしばらく誰にも知られないままだった。

 AUB考古学博物館は、著名な考古学者レイラ・バドル氏(79)が40年以上館長を務めて、20年6月末に退任。9月に新任者が就任するまで、2カ月間館長が不在だった。爆発事故が起きたのはちょうどその間だ。

2020年8月、ベイルート港で起きた大爆発で、市内の考古学博物館に展示されていた古代ガラスの容器70点あまりが粉々に壊れました。これを再生させる取り組みが、国境を越えた協力で続いています。

不思議なことに内部は無傷 1カ所をのぞいて

 爆発から数日後、博物館を初…

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