18世紀、ロンドンの中心部に創設された大英博物館は、世界最古の国立博物館であると同時に、世界最大規模のコレクションも誇る。収集だけでなく、修復や研究の部門も手厚いのが特徴だ。
2020年8月に起きたレバノンのベイルート港大爆発を受けて、大英博物館の幹部の間でも、文化財への影響への懸念が広がった。ベイルート・アメリカン大学(AUB)考古学博物館の古代ガラス展示が大きな被害を受けたと聞いて連絡を取り、協力の可能性を探った。
大英博物館が予算を確保し、支援に乗り出したのは、翌21年。粉々になった古代ガラス展示品の一部をロンドンに送ってもらい、修復を担当することになった。ベイルートの現地で修復作業に取り組んでいたフランスのフリーの修復家クレール・キュイオベールさん(35)が8点を選択し、送付の手続きをした。保存状態が比較的いいものだったという。
「ロンドンまでの長旅に耐えるだけの強度を持つ破片でなければなりませんでした。それに、修復できる可能性が高くないと、わざわざ送る意味はありませんし」
【連載】レバノンの古代ガラス 修復へのチームワーク
ベイルート港で起きた大爆発で、市内の考古学博物館に展示されていた古代ガラスの容器70点あまりが粉々に。大英博物館の協力を得て本格的に始まった修復プロジェクトは、レバノンの人々の壊れた心を取り戻す営みでもありました。
修復プロジェクトの適任者は他におらず
大英博物館が8点分の破片を…