架空の世界が目の前に! 原作者・池井戸潤が撮った映画の現場

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池井戸潤が撮る 日本の工場

 「半沢直樹」シリーズなどでおなじみの作家、池井戸潤さんがさまざまな仕事の現場にカメラと文章で迫る企画が、朝日新聞土曜別刷り「be」で連載中です。今回は、17日公開の松竹映画『シャイロックの子供たち』の撮影現場(茨城県古河市)を訪ねました。大勢のスタッフやキャストによって視覚化されていく物語世界。さて、原作者はどう受け止める? デジタル版では池井戸さんの文章とともに、池井戸さん撮影の写真をたっぷりご覧いただけます。

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■撮影を支える集中力と忍耐

 廃店になった地方銀行の支店で、ロケが行われていた。かつて会議や支店内の行事に使われていたらしい3階の大部屋だ。

 詰めているスタッフは総勢60名ほど。私が顔を出したときはちょうど、次のシーンのための撮影準備中。拙著原作の映画『シャイロックの子供たち』の現場である。

 俳優が移動する動線を何度も確認し、カメラの位置などを入念にチェック、リハーサルが始まった。

 阿部サダヲさんが演じる主役のもとに、ドアを開けて入ってきた玉森裕太くんが、書類を見せる場面だ。

 本木克英監督が演技をつけ、その後実際にカメラを回してのリハーサルが繰り返される。

「本番行くよ!」

 やがて本木監督の声が上がった。が――。

「スタート!」の声がかからない。代わりに聞こえてきたのは、

「テンクウ待ちでーす」

 という女性スタッフの声。それで全員待機状態に。

 テンクウとはなんぞや?

 近くにいた宣伝プロデューサーに尋ねたら、天気のことだと教えてくれた。

 この日は晴れたり曇ったり。それまでに撮ったシーンが曇っていたので、窓からの明かりを揃(そろ)えるため、いま出ている太陽が雲に隠れるのを待っているのだとか。外での撮影が天気に左右されるのはわかるが、室内撮影でも天気と無縁ではいられない。ドラマの現場も同様だが、撮影に注がれる集中力と忍耐には、想像を絶するものがある。

 やがて女性行員役の上戸彩さんも登場、華やかさを添えた。明るい上戸さんは、ともすれば張り詰めがちな撮影現場を和ませるムードメーカーとして、ストーリーの中だけではなく、現場でも大切な役割を担っていた。

 ちなみに、原作者である私が撮影現場を訪れるのは、ひとつのドラマや映画で一度か二度だけ。行けば気を使わせてしまうし、ただでさえ忙しい現場の人たちにそんなことはさせたくない。そして大抵の場合、宣伝も兼ねて週刊誌グラビアなどの仕事として行くようにしている。役者さん目当てに興味半分で遊びに行くようなことはしない。

 撮影現場は、監督の名前をと…

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