自民党で掲げてきた社会政策の理念「自助」がかすみ、「公助」への傾斜が強まりつつある。岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」を打ちあげて以降、児童手当の所得制限撤廃の提案も飛び出し、変化が顕著だ。これまで自助を重視してきた党内の議員からは疑問の声もあがっている。
自分で自分を守る「自助」、地域や近隣で支え合う「共助」、国や自治体が支える「公助」がある。
首相は「児童手当をはじめとする経済的支援の充実も柱の一つとして取り上げている」(1月31日の衆院予算委員会)と公的支援の拡充を検討する姿勢で、「対象年齢の拡大、多子加算をどうするかも論点だ」(政府高官)とする。
首相だけではない。自民の茂木敏充幹事長も児童手当の所得制限撤廃を首相に提案。2日には遠藤利明総務会長も、所得制限の必要性を主張した過去に触れて「当時の判断が仮に間違ったとすれば謝って、そして見直せばいい」と、茂木氏の提案に同調した。
自民は綱領に、再配分で国民の自立心を損なう社会主義的政策はとらないと明記。公助ではなく自助を重視してきた歴史がある。
子育ては「一義的には親、家族が担うもの」として、公助がベースの旧民主党政権の子ども手当に「子育てを家族から奪い取り、国家や社会が行う子育ての国家化、社会化」(安倍晋三元首相、2010年の雑誌インタビュー)との批判を展開したこともある。
「自助・共助・公助、そして絆」と自助重視を掲げた菅義偉政権は、年収1200万円以上の世帯に支給していた月5千円の児童手当の「特例給付」を廃止した。
みすえるのは統一地方選?
こういった経緯とは逆方向の検討や議論が政権・与党内でされている。要因の一つに4月の統一地方選がありそうだ。
内閣支持率が低迷する政権は…
- 【視点】
選挙対策で政策の力点を変えていくのは悪くない。というより、民主主義のシステムからみて良いことだと思う。中北教授がご指摘の通り、いかにも融通無碍な自民党らしい。しかし、目先の選挙のためだけのリップサービスで、結局はいい加減に当事者任せであいま