「一日も早く戻って」 仏像盗まれた対馬の寺側、韓国から返却願う
10年前に長崎県対馬市の観音寺から盗まれ、韓国へ持ち込まれた、県の指定有形文化財「観世音(かんぜおん)菩薩坐像(ぼさつざぞう)」。韓国の裁判所が1日、観音寺の所有権を認めた。観音寺の村瀬辰馬総代長(68)は「長く待ち望んでいた判決が出た。うれしいです」と語った。
盗まれたのは、村瀬さんの父が総代長だった2012年。寺の扉や仏壇のガラス戸は一切壊れておらず、この仏像だけがなくなっていたという。「金額的な価値なんて考えたことがなかった。信仰の中心であるご本尊様がいない状態なんです」。檀家(だんか)の中には、涙を流して悔しがる人もいた。寺を応援しようと、全国から仏像が届いたという。
13年、韓国人グループが韓国で検挙され、仏像は韓国政府が保管することになった。「すぐに返却されるものと思っていた」(村瀬さん)。しかし、韓国の浮石(プソク)寺が「14世紀に倭寇(わこう)によって略奪された」として所有権を主張。韓国政府に、仏像の引き渡しを求めて提訴した。一審判決では浮石寺の主張が認められ、韓国政府が控訴していた。
観音寺の前には、仏像の説明書きが残されている。仏像内から見つかった納入品によれば、高麗時代末期、「浮石寺において、戒真等32名の発願によって造立された」とされている。
「倭寇がとった根拠もない」
仏像が寺に渡った経緯につい…