国枝選手の「後継者」も闘った肉腫とは 自覚症状なく、遅れる診断
2月4日は世界対がんデー。7日に引退会見を開く車いすテニス男子の第一人者、国枝慎吾さん(38)の後継者とも言われる小田凱人(ときと)さん(16)は、9歳のときに骨肉腫と診断され、左足を手術した。肉腫とは、どういう病気なのか。
肉腫は、骨や筋肉、脂肪や神経、血管などをつくる細胞にできる極めてまれながんで、がん全体に占める発生の割合は1%ほどとされる。体や臓器の表面を覆う上皮細胞にできるがんと区別して、英語ではsarcoma(サルコーマ)と呼ばれる。
手足や鼻、子宮など体の様々な部位に発生するのが特徴で、組織型などを細かく分類すると、50種類以上のタイプがあるともいわれる。患者数が少ない希少がんだ。
初期には目立った自覚症状がなく、発見は遅れがちだ。多くの部位に広がることもあるため、診療科の連携も他のがん以上に求められる。症例が少ないため、全国に400以上ある「がん診療連携拠点病院」でも、患者を受け入れられる病院は限られる。海外で使える薬が日本では使えないドラッグラグの課題もある。
早期発見の場合は手術で根治が期待できる。進行していた場合は、化学療法や放射線治療を組み合わせる。ここ10年ほどで新規に使える薬がいくつか登場し、治験に取り組む企業も増えてきた。
「年間数十例~100例といったように、十分に診療経験がある施設で治療を受けるのが理想だが、そのメリットを享受できる患者さんもいれば、地域的にアクセスが難しい患者さんもいる。集約化の問題は、患者さんと医療者が必要性と課題をよく議論したうえで進めることが重要です」と、国立がん研究センターの川井章・希少がんセンター長(中央病院骨軟部腫瘍(しゅよう)・リハビリテーション科長)は話す。
厚生労働省のがん対策推進協議会でも課題は共有されており、大学病院や地域の中核を担う病院には、「希少がん」や「肉腫」の部門を掲げる病院が増えてきた。
国立がん研究センターは、希少がんの専門的な治療が可能な病院の情報公開を、がん情報サービス(https://hospdb.ganjoho.jp/rarespecialhosp/index.html)のサイトで始めた。手足や体幹の浅い部分(内臓以外)に発生した軟部肉腫(53施設)、網膜芽細胞腫などの目のがんの治療実績がある病院などがすでに示され、他の希少がんについても、病院名の公開に向け準備を進めている。
また、治療にかかわることが多い日本整形外科学会でも、診療症例数を病院名とともに公表している。
治療で医師から十分な説明を得られなかったり、情報不足で孤独に陥ったりしてしまうのを避けるため、国立がん研究センターは、希少がんホットライン(03・3543・5601)を開設。検査や治療の説明、病院や患者会の紹介などの相談に応じている。
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【肉腫の治療や相談先に困ったら】
日本整形外科学会
骨・軟部腫瘍相談コーナー
https://www.joa.or.jp/public/bone/born_consultation_corner.html
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