何度も揺らいだ「図書館の自由」 そのたび補強された「知る自由」
文部科学省は昨年、全国の学校や公立の図書館に、拉致問題に関する本を充実するよう依頼文書を出しました。図書館学が専門の福井佑介・京都大学准教授は、歴史をひもとくと、こうした介入や圧力によって揺るがされるたびに図書館は「知る自由」を補強してきたと語ります。その道のりについて聞きました。
図書館は「知る自由」を保障する責任を自らに課しています。すべての人が必要な資料を入手し、利用する権利を持っている。そのために、図書館ではあらゆる情報を得られるようにする必要があるのです。
日本図書館協会は1954年に「図書館の自由に関する宣言」を採択し、「知る自由」を基本的人権としました。「知る権利」に社会の注目が集まる以前の、先駆的な試みです。79年の改訂では、「知る自由」を憲法が定める「表現の自由」と表裏一体の関係に位置づけました。受け手が妨げられることなく情報を得られなければ、表現の自由はあり得ません。介入や圧力とは相いれません。
54年の「宣言」は、アメリ…
- 【視点】
先日豊田恭子さんの「闘う図書館ーアメリカのライブラリアンシップ」(筑摩書房、2022年)を読んだのですが、私が持っていた、「無料で本を借りる場所」という図書館の概念を大きく変える著書でした。中でも豊田さんがメリーランド州の公共図書館を訪問し