円熟期での引退決断 福永祐一が目の前の1億円より大切にした信念

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松本龍三郎
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 現役トップクラスの騎手が調教師に転身――。

 2022年12月8日、そのニュースは競馬界の枠を超え、世間にも驚きをもって受け止められた。

 JRA(日本中央競馬会)のジョッキーとして、四半世紀にわたり活躍してきた福永祐一が、2月いっぱいでステッキを置く。

 2600勝を超えた通算勝ち星は史上4位、昨年に中央競馬で挙げた101勝は全体の7位。年間100勝は2010年から13年連続で達成し、史上最長記録を更新中だ。

 昨年もフェブラリーS、皐月賞のGⅠタイトルを手にし、大舞台での勝負強さは健在。直近5年間の日本ダービーでは3度も栄光のゴールを駆け抜け、20年にはコントレイルを史上3頭目の無敗の3冠に導いた。

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 脂の乗りきった46歳。世界の一流レースで騎乗する40代は珍しくない。JRAの勝利数で昨年のトップ20位までに、40代以上が6人いる。福永自身、勝ち鞍(くら)が落ち込んだわけでも、けがで精彩を欠いているわけでもない。むしろ不惑を迎えてからの手綱さばきは、さらに磨きがかかっていた。

 なのに、なぜ?

 決断の背景を知りたくて、取材を申し込んだ。

 「なんで?って言われると、色々な理由があるんですけど。決定的な一つの要因があるわけではないですね」

 理論派らしく、どんな問いに対しても明確に、そして解きほぐすように、自身の思いを話してくれた。

 「騎手に対する情熱が冷めてきたというのはないですね。むしろ上がってきてるぐらい。ただそれ以上に、調教師をやってみたいという気持ちが強くなった。これは、自分の内面の問題です」

 20代、30代と経験を積み重ねるうちに、サラブレッドとの向き合い方に自身の志向が強く現れた。それも幾つかある理由の一つかもしれない。

 「いろんなジョッキーがいるんです。最後のバトンだけ受け取って決める人、過程に関しては一切関与せず、興味もないっていう人もいる」

 でも、福永は違った。「自分…

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