ずば抜けてうまい――。
トヨタ自動車で内野守備のコーチをしていた乗田貴士さん(39)は、愛知学院大の遊撃手を見て、監督に直訴した。
「絶対に、取りにいきたいです」
2014年のことだ。コーチになってから、選手を獲得したいと自分から主張したのは初めてだった。
「動きがきれいで無駄がない。アウトにする確率が高いと思った」
乗田さん自身、京都・平安高(現・龍谷大平安高)、佛教大、トヨタ自動車とその守備力で生き抜いてきた。
前年に選手を引退し、コーチになったばかりで出会った「金の卵」だった。
翌15年、その選手はトヨタ自動車に入社してきた。が、いざ社会人の中に入るとたいして目立たなかった。
「意外と癖が多くて、ミスが多い。安定感がなかった」
乗田さんが感じた欠点は複数あった。
股関節が硬く、打球に追いついているのに腰を落としきれず、グラブの下を通過させてしまう。
打球に対してグラブの捕球面を向けるのが遅く、ミスしやすい。
送球の際のリリースポイントが体に近すぎて、シュート回転してしまう。
そして何より、「本気を感じ…
- 【視点】
WBCの侍ジャパンでショートを担う源田選手の分岐点を描いたストーリーです。恩師の乗田さんに対するこの言葉を、我が身に置き換えて考えてしまいました。 「乗田さんは自分の守備に関してダメなところとか、技術的なところとか、初めてちゃんと『ダ

言葉でたどる大谷翔平の軌跡
エンゼルス大谷翔平の語録集。幼少期から高校野球、日本ハム、そして大リーグまで大谷の軌跡をたどります。[もっと見る]