専守防衛が崩れ次は「核武装議論」 冷泉彰彦氏が心配する日本の空気
岸田政権は防衛費を大幅に増額させ、日本の安全保障政策を大転換すると訴えています。戦後日本が守ってきたはずの専守防衛の原則はどこへ。そもそも日本の安全はこれで確保されるのでしょうか。1990年代から米国に在住し、日米関係の変容を見つめてきた作家でジャーナリストの冷泉彰彦さんに様々な視点から聞きました。
――日本の安全保障政策の転換を米国からどう見ていますか。
「米国のミサイルを購入し、それをまかなうために増税も行うということですね。それで日本の安全が確保されるのか、冷静に議論する必要があると思います。国際環境は激変していますが、日本の安全について考えるには軍事的な側面だけではなく、多面的な議論が欠かせません」
――軍事力以外ですか。
「そうです。日米中の3カ国の関係について考えてみましょう。基本になっているのは1972年のニクソン米大統領の訪中前に確立した、キッシンジャー大統領補佐官と周恩来首相によるドクトリンです。真相はまだ研究対象ですが、キッシンジャーの回想録などによると、中国側には、日本が将来軍事大国になり、再び中国を侵略するかもしれないという心配があったようです。キッシンジャーは日米安保条約が『ビンのフタ』になって日本軍国主義を抑える、と説得したとされています。問われているのはそれからの50年で信頼関係を強化する努力をどれだけしてきたかです」
「日本の一部保守政治家らは、この透明なビンの中で、過去の日本軍国主義を正当化するような言動を繰り返してきました」
「反撃能力」と先制攻撃の区別は
――日本が専守防衛から逸脱…
- 【視点】
冷泉さんとはプリンストン在住時にお会いしたことがあり、そのバランスの取れた見識は、しばしば私個人の意見とは異なるとはいえ、傾聴に値するもの。「ビンのふた」論も、現状の国際環境から見れば、少し違った意味合いを持つようになったが、その点は冷泉さ
- 【視点】
ご指摘に同感です。さらに言えば「日本の空気」どころではなく、政府の論理を突き詰めると核武装に向かいかねないという、もっと具体的な恐れがあります。 政府が今回保有を決めた敵基地攻撃能力に関する最近の国会での首相答弁を聞いていると、具体的に