生前と死亡時の賠償金の差額、国に支払い命じる 炭鉱じん肺訴訟
炭鉱労働を続けたことでじん肺にかかったとして国から賠償金を受け取り、その後死亡した男性の長女が、死亡した場合に得られる賠償金との差額を支払うよう国に求めた訴訟の判決が3日、札幌地裁であった。守山修生裁判長は「じん肺死による損害は(生存時の)病状による損害とは質的に異なる」と述べ、国に110万円の支払いを命じた。
原告弁護団によると、石炭じん肺で生前と死亡時の賠償金の差額をめぐる訴訟の判決は全国で初めて。炭鉱が盛んだった北海道では約900人の被災者が生前に国と和解しており、弁護団は「ほかの遺族らにも救済の道が開かれた」としている。
判決などによると、男性は1958~94年、北海道内の複数の炭鉱で働き、93年7月にじん肺にかかったことが認められた。2007年、国に損害賠償請求訴訟を起こし、09年に和解して賠償金806万6666円を受け取った。20年1月、じん肺が原因の心不全で77歳で死亡した。
男性が09年の和解時に亡くなっていた場合、遺族は916万6666円を受け取ることができた。訴訟では、この差額110万円が遺族に支払われるべきかが争点になった。
国側は「過去の同種訴訟では、新たに損害賠償を請求しないことを前提に和解した例もある」として、差額の請求は認められないと主張した。
判決は、国側の主張を「男性と国との和解条項には、新たに損害賠償請求をしないとする条項がない」などとして退けた。男性が国に対して新たに損害賠償請求をしないという意思はなかったとして、原告側の主張を全面的に認めた。
弁護団によると、アスベストや薬害肝炎をめぐっては、被災者が死亡した場合は生前に支払われた給付金との差額が遺族らに支払われるが、石炭じん肺については同様の法制度がないという。(平岡春人)
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