「図書館は住民たちの広場」 国の蔵書介入で、元名物館長が抱く懸念
「拉致問題の関連本の充実を」。文部科学省は昨年、全国の公立・学校図書館へ依頼を出しました。「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した図書館の館長だった嶋田学さんは、この依頼はいまの図書館の「基本」に逆行していると言います。
岡山県瀬戸内市にある瀬戸内市民図書館のコンセプトは「もちより・みつけ・わけあう広場」です。2011年4月、公募で開設準備室長になって基本計画づくりから携わり、19年3月まで館長を務めました。
市民の生活上の課題やニーズを「もちより」、解決策を「みつけ」、他の人とも「わけあう」。図書館はそのための広場です。市民ワークショップで基本計画を検討し、開館前から移動図書館を始めたり、「医療・介護」「課題解決支援」などテーマ別のコーナーを設けたりしました。
多彩なサービスが提供されるようになった図書館ですが、本を貸し出し、座席を用意するのが仕事というイメージはまだまだ拭えていません。それも重要な役割ですが、図書館の機能はそれだけではありません。どんなサービスを提供するかを市民と協働で練り上げることで、図書館の存在感も増すと思います。前任地の旧滋賀県永源寺町(現東近江市)では、音楽好きの住民と一緒に図書館でジャズのイベントを企画するなど、みんなが集える施設づくりに手応えを感じました。
1950年代の図書館は閉架…