5類になっても「ゼロコロナ続ける」 大学病院長らが引けない理由
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5月8日に「5類」に引き下げられる。コロナ患者の入院を受け入れてきた全国の大学病院長らは3日、コロナの5類移行後も「医療機関では『ゼロコロナ』を継続しなくてはならない」として、診療報酬加算、病床確保料などの財政支援を続けるよう厚生労働省に求めた。
この日、82大学の医学部長や病院長でつくる一般社団法人「全国医学部長病院長会議」の代表らが厚労省に要望書を提出し、記者会見を開いた。
要望書はコロナ診療について、通常診療より約3倍の人手がかかるほか、感染者と接する際の完全防護、動線を分けるゾーニングなどを実施するには「とにかく人手、時間、物資、空間を要する」と主張した。
重篤度は下がったが、高齢者や基礎疾患がある人は重症化リスクがあり、回復が遅れる懸念もある。特に大学病院には免疫力が落ちた状態の人も多いと指摘。「病院内にウイルスを持ち込ませず、院内で広げないための対策は5類になっても変わらず必要」とした。その上で、診療報酬の加算、病床確保や病棟閉鎖に対する財政支援が「通常診療の維持にも大きく貢献した」として、5類移行後も続けるよう求めた。
同会議によると、「第7波」による感染者が増えた昨年8月、15大学病院のコロナ入院の診療報酬請求額は計約9億6600万円だった。これを5類下と仮定して計算すると、請求できる額は約3割の約2億9800万円にまで減るという。また、81大学病院が2021年度に受け取った病床確保料は計約1500億円だったという。
会見した横手幸太郎会長(千葉大医学部付属病院長)は「各病院はぎりぎりの収支でやってきた上、今は物価高。赤字のままでは通常診療ができない」と訴えた。同席した瀬戸泰之・東大医学部付属病院長は「入院患者は減ったが、また感染の波が来たら多くの病床が必要になる」「(感染すれば)がんの予後が悪いことも報告され、コロナは季節性インフルエンザと明らかに違う」と述べた。厚労省は5類下の医療提供体制や財政支援のあり方について、3月上旬にも具体的な方針を示す予定だ。(枝松佑樹)
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