世界自然遺産の5地域、一緒に課題解決へ 連携の「会議」発足
ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界自然遺産に登録されている鹿児島県の屋久島や青森・秋田県の白神山地、北海道の知床など計5地域の関連22自治体・2団体が「世界自然遺産5地域会議」を発足させた。情報を共有し、共通する課題の解決策を見いだしていく。
日本の世界自然遺産登録は1993年12月の屋久島と白神山地が最初。今年は30周年の節目となる。2005年に知床が続き、11年に東京都の小笠原諸島、そして21年7月に鹿児島・沖縄県の「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が登録された。
同会議には、屋久島町や奄美市、徳之島町をはじめとする22の地元市町村と屋久島環境文化財団、知床財団が参加する。寄付を募って原生林を再生する知床の「しれとこ100平方メートル運動」など各地域の成果と、それぞれが抱える悩みを共有。先進自治体の知恵を直接聞いて参考にするほか、単独では解決できない共通課題にはともに国などに働きかけてもいくという。
1月18日に屋久島で開かれた同会議設立の会合では、奄美大島のアマミノクロウサギの交通事故死を減らす自主ルール運用、知床のナショナルトラスト運動など先進事例が報告された。同時に、保護した野生動物による農作物への被害や観光施設の経年劣化対策と財源不足(白神山地)、外来種による固有生物の絶滅(小笠原)、観光客の急増による登山道の荒廃やトイレ不足(屋久島)などの問題が指摘された。
同会議は、5地域が連携して日本発の「自然保護と利用の両立モデル」を見いだし、25年の大阪・関西万博で世界に示すとともに、政策提言を行う方針だ。また、そうした活動に共感する企業や個人にも参加を呼びかけていくという。(冨田悦央)
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