冷たくなった姉の顔をなで、母は何度もわびていた 被爆2世に判決へ

有料記事核といのちを考える

福冨旅史 黒田陸離
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 被爆者だけでなく、実の子である「被爆2世」にも援護をすべきなのに、放置された――。被爆2世らがそう訴え、国に損害賠償を求めた訴訟の判決が7日、広島地裁である。同種訴訟の判決は、訴えを退けた昨年12月の長崎地裁判決に続いて2例目。被爆2世は全国に30万~50万人いるとされる。必要な法律を整備しなかった「立法不作為」と司法が認めるかが焦点だ。

 2018年5月、スイス・ジュネーブであった核不拡散条約(NPT)再検討会議の準備委員会。高齢で渡航が難しくなった被爆者たちの代わりに派遣された被爆2世の角田(かくだ)拓さん(59)=広島市東区=が、サイドイベントで証言した。

 「親世代と同じように、がんや白血病といった病気になるのではないかとの放射線リスクにおびえて生きること自体が人権侵害だ」

 翌年、肺腺がんを患っていた姉を亡くした。58歳だった。生前、姉の病気について、母(88)に伝えなかった。広島で被爆した母に「自分のせいだ」と自分を責めてほしくなかった。姉の死後に事情を知らされた母は、冷たくなった姉の顔をなでながら何度も名前を呼び、わびていた。

 母は10歳のころ、爆心地から約2・5キロの牛田国民学校(現・牛田小)の校庭で被爆した。右腕や首、両肩にやけどを負った。

 その後、60代で脳梗塞(こうそく)を患い、右半身が不自由になった。今はほぼ、寝たきり状態だ。姉や母の病気に、原爆による放射線の影響があったかどうかは分からない。

 自身が大きな病気になったこ…

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