飯島愛、没後15年の光と影 押井守と目指した未完のアニメ企画
どうも、ご無沙汰~。
この世を去って15年近く経とうとしているのに、今でもあの鼻にかかったハスキーボイスで画面にひょっこり現れる気がする。バブルの申し子として、バラエティー番組にひっぱりだこだった飯島愛さん。渋谷の高層マンションで独り亡くなっているのが発見されたのは、2008年のクリスマスイブだった。36歳という若さでの死は、世間に大きな衝撃を与えた。
その飯島さんをスターダムに押し上げる転機となったのが、28歳で出版した自伝「PLATONIC SEX」である。AV女優を経て、深夜番組で芸能界デビュー。過激な「Tバック」で話題を集め、その後タレントとして知名度が浸透しつつあるタイミングでの刊行だった。
担当編集者だった小学館出版局の和阪直之さん(57)は、飯島さんの所属事務所の社長から出版の話を持ちかけられた。本人の第一印象は、シャイで繊細で露悪的。当時はタレント本の花盛りだったが、「生ぬるいエッセー本にはしたくない、言い訳がましくしない」と合意し、内容はとことん赤裸々になった。
教育熱心な家庭に生を受けるも非行に走り、シンナー、援助交際、整形、AV、中絶……。バブルの狂騒とともに駆け抜けた壮絶な半生が描かれた。
驚異的な売れ方、その背景は
初版2万部で、発売当日に8万部を増刷。1年でミリオンセラーになる驚異の売れ方をした。「売れるという予感をはるかに超えた。水商売やAVなど後ろめたいと思われていた“陰”のものを“陽”に持っていき、女性の圧倒的な支持を得た。隠さずに語っていいんだ、と思わせたことも大きかったんでしょうね」
単なる暴露本ではなく、ディスコや派手な金回りなどバブルの風俗も活写している。何よりも、過激なのに文章が湿っぽくなかった。
その才能は、ほどなく始まった週刊朝日の連載「錦糸町風印税生活」を担当した編集者、福光恵さん(62)も目の当たりにした。初めての雑誌連載で、飯島さんは句読点の全くない文章を出してきて絶句した。「普通ならありえない。でもブログと相性のいい、新しい時代の書き手と思った。彼女は、適当なことは書けない、と徹底的に言葉にこだわって、毎週何度も書き直した。2年続けて、最後は『身体を壊さないか心配』という声まで出て連載を終えた」という。
本書の刊行後、飯島さんをレギュラーで起用したのが、バラエティー番組「中居正広の金曜日のスマたちへ」(金スマ)だ。当時プロデューサーだったTBSホールディングス執行役員の阿部龍二郎さん(58)は「1回目の収録で、MCとして気を使いすぎている中居君を見て『積極的にフォローしてみようかな』と彼女は決めて進行を助けてくれた。しゃべり手としての勘の鋭さは天才的だった」と振り返る。本音のコメントで斬り込む飯島さんの面白さは、今でもテレビ業界の語りぐさになっている。
体調が悪化していた飯島さんは07年、芸能界引退を発表し、番組をすべて降板した。「本当は本を出した時に、やめようと思ったんだけどずるずる来ちゃった」。阿部さんは飯島さんのそんな言葉を思い出す。「本から何年も経って、愛ちゃん自身が朗読するオーディオブックの刊行が決まり『まだこの本で仕事しなくちゃいけない。かっこ悪い……』とも言ってました」。自伝は飯島さんを人気者に押し上げた一方、桎梏(しっこく)にもなっていたのだった。
芸能界を去って、2年も経た…