世界のリーダーはダボスを目指す 小さな町で議論を交わす魅力とは
「ロシアが勝てば、他国を侵略してもいいというメッセージを与えることになってしまう」。フィンランドのマリン首相がそう語ると、ウクライナの隣国モルドバのサンドゥ大統領が「私たちは(ロシアに)勝たなければいけない」と応じた。
1月16~20日に、アルプスの山あいにあるスイス東部の町ダボスで開かれた世界経済フォーラム(WEF)の年次総会。「ダボス会議」と呼ばれることもあるこの会合の出席者は今年、2700人を超えた。国家元首と首脳は47人。閣僚と中央銀行総裁を合わせると、100人を超える。国連総会と世界銀行・国際通貨基金(IMF)総会を凝縮したような顔ぶれだ。
大統領や首相、世界的企業の経営者らがオープンなステージで持論を交わす光景は、ダボスならではといえる。
人口わずか1万数千人。スイス最大の都市で国際空港があるチューリヒから、鉄道でも、車でも、2時間はかかる。鉄道は乗り継がなければならず、直通の高速道路があるわけでもない。このこぢんまりした町に、なぜ世界のリーダーたちが集まるのだろうか。
年次総会は、なにかを決めるための集まりではない。聴衆が1千人を超える特別講演から、数十人規模のパネルディスカッションまで、「セッション」と呼ばれる集まりは、480余り。多いときで10以上のセッションが、同時進行でおこなわれる。そこで参加者たちは、世界の分断やエネルギー危機、気候変動、ジェンダー格差など、地球規模の課題を議論する。
セッションの約7割はオンラインで配信された。ライブ中継の視聴者は、延べ250万人。世界中から集まったメディアの年次総会に関する報道は今年、約210万件にのぼったという。
ひたすら自分の言葉で語る
WEFの理事をつとめ、年次…
- 【視点】
実は、ロシアはダボスの世界経済フォーラムをかなり重視してきた国と言える。ロシアの経済エリートたちは足繁く通っていたし、2021年にはプーチン大統領がリモート講演したこともあった。ロシアが曲がりなりにもグローバル経済に参加していた時代の、象徴
- 【視点】
もともとダボス会議は、その主催者であるクラウス・シュワブがダボスでスキーをやっていた時にたまたま各界の著名人もそこにいて、膝詰めで話をしたことがきっかけで始まったものなので、意図してダボスを選んだというよりは、そうした経緯でダボスが選ばれた