第6回「死ぬときじゃない」戦時下でライブ 妻と再会の日に書きたい詩は

有料記事ウクライナ情勢

キーウ=高野裕介
[PR]

 ロシアによる侵攻は、多くの市民の日常を奪った。過酷な日々のなかで、それでも、心豊かな暮らしを続けようと、音楽を奏でる人たちがいる。なぜ歌い続けるのか。一人のミュージシャンに話を聞いた。

キーウ、ミュージシャンのイブハン・チジェブスキーさん(39)

 ロシアの侵攻が始まる前、妻のハンナ(35)はずっと心配していました。私はそんなことが起きるなんて思わなかった。2019年から3人の仲間とバンドを組んでいて、「新しい曲のレコーディングをしよう」と言っていたんです。でも、妻があまり心配するので、とりあえず荷物をバッグに詰めてはいました。

 2月24日の早朝、何度も爆発音がしました。妻はパニックになってしまい、私は落ち着かなければ、と思いました。その後だって、私は愛犬のマルガリータの散歩に行ったんですよ。

 でも結局、その日の午後にキーウ南郊にある妻の実家に避難しました。普段なら車で2時間の距離ですが、渋滞がひどくて6~7時間もかかりました。そこで3週間ほど過ごして、妻を隣国のモルドバに避難させました。その日、シャワーを浴びてコニャックを1本空けました。愛している人と離ればなれになった、これからどうなるのかわからないという不安で泣けてきました。2時間も泣いたんです。

 6歳下の弟マキシムは、軍の情報要員として前線に行きました。私はミュージシャンとして何ができるかを考えた。他のバンドと一緒にライブをやって、フェイスブックインスタグラムで寄付を募り始めました。ライブは今まで10回くらいやったかな。集まったお金で三菱(自動車)の中古のSUVを買って、弟の部隊に寄付したんです。他にも、医薬品を集めて支援団体に渡すなどしました。

 多いときには、ライブに50…

この記事は有料記事です。残り539文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(春トクキャンペーン中)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

春トク_2カ月間無料
ウクライナ情勢 最新ニュース

ウクライナ情勢 最新ニュース

ロシアのウクライナ侵攻に関する最新のニュース、国際社会の動向、経済への影響などを、わかりやすくお伝えします。[もっと見る]

連載ウクライナ市民の声 侵攻1年、戦火の下で(全15回)

この連載の一覧を見る