保育園での虐待を防ぐには…保育士兼研究者の考察と提言 論座から

「論座」編集長・杉林浩典
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 全国の保育園で保育士による虐待が明らかになるたび、心がうずきます。どうしたら防げるのでしょうか。中部大学非常勤講師で保育士の天野諭(さとる)さん=写真=は1月25、29日の論座(https://webronza.asahi.com/別ウインドウで開きます)に「保育士はなぜ虐待をしてしまうのか?~保育士・研究者による体験的考察」を寄稿しました。

 虐待が起きると、直接的な原因と共に問題になるのが慢性的な人手不足です。低賃金や国の配置基準が背景にあります。制度的な改善は国や自治体が率先して取り組むべき課題です。

 その重要性を踏まえつつ、天野さんは、現場における再発防止策を考えます。疲労困憊(こんぱい)で、いら立ちや怒りが湧き上がった時、いかに「子どもが大好き」な先生にリセットし合うか。訴えるのは、互いの感情をケアする人間関係の構築です。

 保育現場では、数多くの子どもを1人で見る「ワンオペ状態」が度々生じます。ネガティブな感情が芽生えた時に、「正直に先輩や同僚に相談できる職場環境が必要」と指摘。そうした感情を口に出すことは「資質・能力不足を認めることではない」として、まかり間違っても「プロとして失格」などと非難しないで、と呼びかけます。

 保育士同士が、お互いをモニタリングする大切さも唱えます。子どもを、威圧や暴力によって管理統制してしまっていないか。自分だけの常識にとらわれすぎていないか――。

 社会全体で「持続的で安全・健全な保育」につなげていくのは、決して簡単ではないと思います。しかし、子どもたちは保育を受ける権利があり、社会の元気の源でもあります。保育の仕事は素晴らしく誇らしいと表現する天野さんが、自らの反省も交えてつづる考察には、いくつものヒントがあると感じます。

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 上記の論考はこちらから(https://webronza.asahi.com/national/articles/2023011600004.html別ウインドウで開きます)(https://webronza.asahi.com/national/articles/2023011600005.html別ウインドウで開きます)。ほかにも「AIロボットが『ワンオペ育児』をなくす?」(https://webronza.asahi.com/national/articles/2022121900005.html別ウインドウで開きます)など、関連した論考を公開しています。

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