防衛費増だけが対中戦略じゃない 加谷珪一さんが語る安全保障と経済
政府の防衛費拡大について、経済評論家の加谷珪一さんは「拙速に決まったことは火を見るより明らか」とした上で、「平時から国債に依存するのは危うい」とも警鐘を鳴らします。では、日本はどんな針路をとればいいのでしょうか。経済の観点からの処方箋(せん)を聞きました。(聞き手・小村田義之)
かや・けいいち 1969年生まれ。日経BP記者、投資ファンド運用会社などを経て現職。「戦争の値段」など著書多数。
――防衛費の拡大についてどう思いますか。
「防衛費拡大が拙速に決まったことは、火を見るより明らかです。財政は単年度主義といって、その年の税収で支出をまかなうのが大原則ですが、防衛費は例外で、後年度の予算を縛ってしまう。たとえば戦闘機などは、メーカーは市販品と違ってたくさん売って開発費を回収できないので、開発費も含めて10年間で1兆円といった長期契約を結ばざるをえない。初年度の予算が1千億円でも、その後9年間、1千億円ずつ払わねばならないのです。これを後年度負担と言いますが、それなのに財源をどうするかも決まっていない。そんな状態で『理解してくれ』と言われても、防衛費を拡大させる是非以前の問題があると、私は思います」
――将来的にどんな問題が想定されますか。
「防衛費のGDP(国内総生産)比2%への引き上げは、世界的に見れば特段多い数字ではありません。ただ、日本は少子高齢化で社会保障費が増え、経済成長できない状況が続いており、財源がない。そのため、財政状況を悪化させずに防衛費を難なく増やす余力はないのが現実です」
「すでに国の支出の3分の1は国債発行による借金頼みですが、それでも何とかなってきたのは、金融緩和で金利を抑えてきたからです。金利が上がれば利払いも増え、手の施しようがなくなる。国債発行が一定程度なら問題ないですが、今の日本は許容範囲をオーバーしている。円の信用がいつ崩壊するかもわからず、非常に危険です。崩壊すれば、財政再建に道筋をつけるための増税が必要になります」
――防衛費拡大に伴う増税には、自民党内にも抵抗感があるようです。
「安倍晋三元首相は、国債で…

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