家族離散の損害 東電に基準を要求 原賠審
政府の原子力損害賠償紛争審査会(内田貴会長)が6日開かれ、東京電力福島第一原発事故の避難により、家族が離散するなどして受けた精神的損害(慰謝料)の増額について、速やかに支払いの基準を設けるよう東電に求めた。
原賠審は昨年12月、追加の賠償指針をつくり、原発事故で過酷な避難を余儀なくされた慰謝料やふるさと変容の慰謝料など、原発事故で避難した人たちに共通する損害を認めた。追加指針をほぼ反映する形で、東電は1月31日、具体的な支払いの基準を発表した。
原賠審の指針には、1人月10万円が受け取れた従来の慰謝料に加え、増額すべき10項目の事情が記された。たとえば、要介護状態など避難の負担が重かった人たちや、乳幼児の世話をしながら避難した保護者らには、月3万円が増額される新基準だ=表。
しかし、家族がばらばらになった精神的な損害や、何度も避難所を移った苦痛など5項目については「個別事情によるところが大きい」として、指針に金額は示さず、東電に「できるだけ類型的対応に努めるべきである」と求めた。
6日の原賠審では複数の委員が、まだ定まっていない増額5項目について、東電に早く基準をつくるよう改めて要求。東電の弓岡哲哉・福島原子力補償相談室長は「なるべく早く対応したい」と答えた。
ただ、慰謝料の増額基準は基本的に避難指示が出た区域の人たちが対象。5項目の基準ができても、自主避難で母子と夫が分かれて暮らした人たちは、東電と直接交渉する必要がある。(編集委員・大月規義)
慰謝料(月10万円)増額の新基準
(1月31日東電発表)
【基準あり】
①要介護状態 月3万円
②身体、精神の障害 月3万円
③①か②の介護 月3万円
④乳幼児の世話
3歳未満 月3万円
3歳以上小学校就学前 月1万円
⑤妊娠中
事故時点で妊娠 一時金として30万円
事故後に妊娠 月3万円
【基準未定】
⑥重度、中等度の持病
⑦⑥の介護
⑧家族の別離、二重生活が生じた
⑨避難所の移動回数が多かった
⑩避難生活に適応が困難な客観的事情
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