児童手当、所得制限撤廃でも9割は恩恵なし 拡充の「本丸」議論を

有料記事岸田政権

西村圭史 久永隆一
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 岸田文雄首相が掲げた「異次元の少子化対策」の具体化に向けた会議が7日、開かれる。テーマは「経済的支援」で、児童手当の拡充が中心となる。与野党の関心はいま、所得制限の撤廃に集まっているが、より多くのお金が必要となる「本丸」は対象年齢の拡大や多子加算だ。一体的に議論される見通しだ。

 児童手当の拡充の主な論点は①所得制限の撤廃②第2子、第3子への加算③対象年齢の拡大だ。

 現在は、中学生までの子ども1人につき月1万~1万5千円が支給される。子ども2人の専業主婦家庭の場合、夫の年収が960万円以上だと月5千円の「特例給付」に減額され、年収1200万円以上には支給されない。

与党も野党も手柄争い

 与野党がそろってこの所得制限の撤廃を要求している。注目の的になったきっかけは、自民党茂木敏充幹事長が1月25日に国会で「所得制限を撤廃するべきだ」と訴えたことだ。

 旧民主党政権がつくった所得制限のない「子ども手当」を、当時野党だった自民党は「バラマキ」だと批判し、所得制限付きの児童手当への変更を主導した経緯がある。さらに菅義偉政権では年収1200万円以上で特例給付を廃止して所得制限をさらに強めた。

 茂木氏は、これまでの主張を急に一転させ、「時代の変化に合わせて、必要な見直しは行っていくべきだ」と主張した。少子化対策に詳しい議員は「党内ではまだ議論されていない」と困惑するが、ある党幹部は、4月の統一地方選が念頭にあると指摘する。「(統一選は)少子化対策で戦う。これまでの延長線上にない政策でないといけない」と狙いを明かす。

 旧民主党政権で厚生労働相を務めた立憲民主党長妻昭政調会長は「反省と総括がなければ信じられるわけがない」と国会で追及した。子ども手当の国会審議で、自民党の丸川珠代氏が「この愚か者めが」とヤジを飛ばしたことも、改めて問題視された。ブーメランのように跳ね返ってきた批判に、首相は国会で「反省すべきものは反省しなければならない」と釈明した。

 こうした状況に、野党も「撤…

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    末冨芳
    (日本大学文理学部教授)
    2023年2月7日12時50分 投稿
    【視点】

    子どもの貧困対策,多子加算も所得制限撤廃も、全部実現して、やっと異次元の貧困対策第一歩というあたりでしょう。 特に子どもの貧困対策は、与野党で完全に置き去りにされており、食事すら満足にできない、電気やガス・水道が止められている親子を放