結婚考える2人に「500万円の壁」 アプリで出会った彼の決断は
児童手当を増やし、少子化対策に。こうした議論がSNS上や国会で活発になっている。だが、これは子どもが生まれた親たちへの支援。そもそも置き去りにされている課題がある。それは、子どもを持つ前の若者たちに立ちふさがる「500万円の壁」だ。
2人の出会い
午後も小雨が続く日だった。関西に住む女性は、路線バスに揺られて京都水族館(京都市)に向かった。2年前の3月2日。彼との初めてのデートだった。
待ち合わせ場所のバス停が見えてきた。それらしい人影が近くに。すぐに視線をそらした。
この10日間くらい、毎日のようにLINEと電話をしていた。でも、実際に会うのはこの日が初めてだった。
2人はマッチングアプリで出会った。
春香さん(仮名)は当時23歳。恋人を探す人どうしを引き合わせるアプリに登録した。同世代の間では、当たり前だった。
国立社会保障・人口問題研究所の調査(2021年)でも最近結婚した人たちの1割はアプリのようなネット経由だった。
2人の行く手を阻んだのは……
もちろん、春香さんにも見ず知らずの人との出会いに警戒心はあった。
すぐに飲みに行こう、ましてや「うちに来ない?」と誘ってくるなんて論外。女友達のアドバイスは守った。
「どんな音楽が好き?」「休日は何をして過ごすの?」
彼は春香さんのことを知ろうとしてくれた。会う約束をする前に、ちゃんと。
2年たった今、春香さんは25歳になった。彼も同年代。結婚の話も出てきた。
「おれ、転職しようと思う…