磁場で電荷を運ぶってどういうこと? トポロジー由来の現象を初観測

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水戸部六美
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 理化学研究所などの研究チームが、表面だけに電流が流れる物質「トポロジカル絶縁体」で、磁場によって電流を制御することに成功したと発表した。電子を一つずつ運ぶ精密デバイスなどの開発につながる可能性がある。

 科学誌ネイチャー・フィジックスに論文(https://doi.org/10.1038/s41567-022-01888-2別ウインドウで開きます)が載った。

 トポロジカル絶縁体は、内部には電流が流れず、表面のみに電流が流れる不思議な物質。まんじゅうで例えるなら、あん部分が絶縁体、薄皮部分が金属的だ。

 さらにこのトポロジカル絶縁体に磁石の性質をもつ元素をまぜた「磁性トポロジカル絶縁体」は、極低温に冷やすと側面だけに電流が流れるようになる。こちらはのり巻きのように、ご飯部分が絶縁体、のり部分だけが金属的な状態だ。

 しかし、磁場をかけると、絶縁体になったはずの表面上下にも、ポンプのように磁場の変化量に比例した電荷が流れる。しかも、その比例定数は基本物理定数のみで表すことができ、物質の詳細によらないという。トポロジー由来の普遍的現象として重要と考えられてきた。

 これは、1998年にノーベル物理学賞を受賞したロバート・ラフリンが理論的に提唱したもので、「ラフリン電荷ポンプ」と呼ばれる。

 これまで、この試料をつくる難しさから観測に至らなかったが、10年近くトポロジカル絶縁体の研究を続けてきた理研などの研究チームが、「分子線エピタキシー」という方法で高品質な試料をつくることで達成した。

 具体的には、磁性トポロジカ…

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