大江千里さんに聞く中高年リスキリング 学びほぐしでごっそり捨てる
記者コラム「多事奏論」 岡崎明子
デジタル化が進むにつれ、新聞記者も「デジタルで読まれる記事の書き方」のリスキリング(学び直し)を迫られている。
紙の記事は、限られた行数で要点を簡潔にまとめることが最優先だ。紙幅により後半部分が掲載されない可能性もあるため、構成は逆三角形が原則。だから、前文と呼ばれるリード文に結論を盛り込む。
この文体を30年近く、たたき込まれてきた。それなのに。デジタルでは簡潔な文章は無味乾燥と受け取られかねない上、情報が詰め込まれ過ぎて読みづらい。スマホでスクロールして読む想定だと、改行の位置も異なってくる。「新聞記事とはかくあるべし」の常識が覆されることばかりだ。
岸田文雄首相からの「リスキリング後押し」圧を受けて学び直すのも嫌だが、伝えたいことが書き方によって読者に届かないのだとしたら悔しい。とはいえ、過去の成功体験がある人や組織ほど「こうしたもんだ」という思考のくせのわなから逃れにくい。それまでのやり方を踏襲した方が楽だし、失敗するリスクも低いからだ。
私もその一人で、当初は文体改造できない言い訳ばかり考えていた。でもミュージシャンの大江千里さん(62)の著書「9番目の音を探して」を読み、考えを改めた。
大江さんは47歳のとき、日…
- 【視点】
大江千里さんが努力と苦労の末にたどり着いた新境地。いわゆるアンラーンの後、「すでに持っているものをジャズで生かしたら」とアドバイスされたことが転機になったそうです。そこから「自らの強み」だったポップスと学びの途上にあったジャズを融合させた音