一気に4カ所、炭素結合の新手法発見 サイエンス誌「ちょっと驚き」
生命現象にも関わる有機化合物に、純粋な炭素原子一つだけを追加して埋め込む、全く新しい化学反応を大阪大学のチームが発見した。医薬品の候補などが、素早く作れるようになるという。論文を掲載した米科学誌サイエンス編集部も「驚き」とコメントしている。
私たちの体を作る有機化合物は炭素(C)や水素、酸素などが互いに「手」を握り合うように結合を作り、安定な形をとっている。
Cは4本の手を持ち、隣のCなどと複雑な骨格を作れる重要な原子だ。Cなどの手をつなぎ替える反応によって体内でも化学工業でも、様々な物質を作り出す。
合成に使われる物質のCは、手の「空き」が多い状態ほど、新たに組める手が多くなり、複雑な物質を作れる。ただ、空きが多いほど不安定なため、これまでは空きが3本のCを使う合成手法が最高だった。
阪大の鳶巣(とびす)守教授(有機化学)らは今回、触媒によく用いられる「NHC」という分子を使って、手の空きが4本のCを合成に使う新手法の開発に成功した。
NHCを構成するCだけが分離され、4本の空いた手が、別の物質と四つの新しい結合を組み、複雑な新物質ができる。
チームが証明した実例では、「アミド化合物」と呼ばれるありふれた物質に、NHCを高温で混ぜた。その結果、アミド化合物にC一つだけを埋め込むことに成功。これは、4本の手が空いた状態で反応したことを意味する。最終的に、医薬品の成分となる複雑な「γ―ラクタム化合物」が合成できた。
1本ずつ手を組み替えていくと4回かかる工程を、最少1回で済ますことができる点が画期的だという。
世界的な雑誌の編集者も驚いた新手法の開発は、ある偶然から始まりました。記事の後半で紹介します。
論文は2日、サイエンスでオ…