シリアでは内戦、逃れたトルコで地震 苦しむ難民に追い打ち

有料記事トルコ・シリア大地震

高野裕介
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 6日に発生した地震が直撃したトルコとシリアの国境地帯には、シリア内戦で傷つき、家を追われた難民や国内避難民が多く暮らす。災害が戦争による苦しみに追い打ちをかけている。

 「私たちには逃げる場所なんてない。大金を払ってこの街にたどり着いたのだから」。被害が甚大だった街の一つ、トルコ南部ガジアンテップ。シリア難民のムハンマド・サカーンさん(42)は、朝日新聞の電話取材にそう訴えた。7年前、シリア北部のアレッポからトルコに来た。アサド政権軍による攻撃を逃れるためだった。

 地震発生後、4人の子どもたちと車の中で一夜を明かした。トルコの別の地域に頼る親戚もいない。アサド政権の強権統治を恐れ、シリアの故郷にも戻れない。地震が起きたとき、大人たちが叫び、慌てる姿を見て、14歳の娘はアレッポで戦闘があったときの記憶を口にしたという。「私たちは戦争で、こんな惨事に慣れてしまっている」。あのときも、何度も家を追われた。

 シリアとの国境に近いガジアンテップ県には、内戦が勃発して以降、ムハンマドさんのような難民が身を寄せた。同県は人口約259万人のうち、約18%がシリアの人たちだ。トルコの市民権を得たり、商売を軌道に乗せたりする難民もいるが、靴などを作る小さな町工場で低賃金で働き、生活基盤が不安定な人も多い。十分な稼ぎがなく、子どもを働きに出す親も少なくない。

 シリア人は当初、トルコに温かく迎え入れられたが、滞在が長引くにつれて風当たりが強くなった。難民の流入で人口が急増して家賃や物価も高騰。低賃金で雇われるシリア人に「仕事が奪われた」との反発も起きた。

 昨年5月の世論調査では「あなたが大統領だったら、シリア難民についてどう対処しますか」との問いで、「シリアに帰ってもらう」との回答が93・6%にのぼった。今年5月には大統領選が予定されており、難民への対応が争点の一つになっている。

 シリアでは2011年3月…

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