「木村先生と出会って僕は」追い続ける背中 将棋棋士八段・飯島栄治
将棋の飯島栄治八段(43)は8日、第81期名人戦・B級2組順位戦9回戦の木村一基九段(49)戦に臨んだ。「木村先生と出会っていなければ、棋士になっていなかったかもしれない」。出会いから25年後の順位戦は、特別な思いを寄せる一局になった。
雨が降ったせい、なのかもしれない。
2023年2月8日午前10時、東京・将棋会館4階「雲鶴の間」で始まった第81期名人戦・B級2組順位戦9回戦で飯島栄治が木村一基と対峙(たいじ)しているのは、38年前のある日、東京の街に雨が降ったからなのかもしれなかった。
「僕はまだ保育園の年長で、あの日、庭に出て遊ぼうとしたら……雨が降ってきたんです。じゃあ仕方ないって、園長先生が将棋と囲碁とオセロを持ってきてくれて、僕はなぜか将棋が面白そうだと思って。でも、指してみたら園長先生に負けちゃって、悔しくてエンエン泣いていたらしいんです。で、家に帰って父に将棋のことを話したら、おおそうかって。父は少しだけ将棋を指す人だったんです。自称アマ初段でしたけど、まあ1級くらいですかね(笑)」
小学校に入る頃には、将棋を指すことが全てになっていた。実家は蕎麦(そば)店で、食事時が過ぎて空き時間ができると店のテーブルで父と指すようになった。将棋が指せるのならどこへでも行った。近所の公共施設に出向けば、高齢者の中に小学校低学年の少年が一人きりで交ざって腕を磨いた。
「最初はボコボコでしたけど…