第2回「この機を逃せば、2度と波はこない」 日産が取り戻した「誇り」
日産自動車と提携先の仏ルノーの首脳は6日、晴れ晴れとした表情で英ロンドンでの共同会見に臨んでいた。互いに15%ずつの出資とし、資本関係を対等とすることで最終合意した。
「過去には確かに過ちもあったかもしれないが、最終的にはそれを克服した」。ルノー最高経営責任者(CEO)のデメオは厳しい交渉をそう振り返った。
1年ほど前のルノーからの打診が、資本関係の見直し(リバランス)への呼び水となった。
両社とアライアンス(連合)を組む三菱自動車を含めた「3社連合」は昨年2月、オンラインで定例の会議を開いていた。ルノー幹部が2023年後半の上場を目指す電気自動車(EV)の新会社の立ち上げについて説明し、日本側の反応をうかがっていた。日産社長の内田誠はゆっくりとした口調でルノー幹部に語りかけた。「リバランスの問題を進めないといけません」。内田は強い意志を示したと、関係者は証言する。
デメオらルノー幹部が昨年5月に来日し、EV新会社への参画を日産に改めて求めたころから交渉は熱を帯びていく。
内田は元会長カルロス・ゴーンの逮捕、さらに不正報酬を受け取っていた問題で元社長・西川広人が辞任する混乱の中、19年12月に社長に就いた。本命は先輩の関潤(日本電産前社長)だったが、ルノー側の意向を考慮して内田が選ばれたとされる。
内田は社内を落ち着けようと、社員の声を聞く車座ミーティングを開催。決算会見時のあいさつには、取引先への感謝の気持ちを強調するなどして、会社の刷新感をアピールしてきた。
ある日産社員は「最初はどんな人か分からず身構えたが、謙虚な姿勢をもった人。求心力が徐々に出てきた」とみる。
日産はバブル期の過剰投資で経営危機に陥り、ルノーの出資で救われた。「対等の精神」で両社の独立性を維持することがうたわれてはいたが、ルノーは資本関係の優位性をてこに水面下で何度も日産に経営統合を迫った。経営の独立を守りたい日産にとって、リバランスは24年来の悲願だ。
日産がルノーにもたらした配当は累計約1兆円に達し、ルノーと提携した際に受けた出資額(約6千億円)を超えた。「不平等条約」に対する反発の声は根強く、両社の結びつきを弱める要因にもなっていた。
「誇りの問題なんだ。この機…