細菌の食欲、電力を生み出す 有機物ぱくぱく、省エネで汚水きれいに
細菌に電気を作らせる「微生物発電」の研究が進んでいる。下水処理に使えば、水をきれいにしながら電力まで得られる。実用化に向け、発電効率を上げる試みも始まっている。
少し蒸し暑い実験室。濁った液体の入ったビーカーと、管でつながった手のひら大の装置が並ぶ。導線のついたクリップを装置の一つにつなぐと、電子音のメロディーが流れ始めた。ディズニーの「小さな世界」だ。
ビーカーの液体は、水で薄めたビール。この装置は液体がふくむ有機物を食べた細菌の力で、約10ミリワットの電力を作る。
開発した水処理大手「栗田工業」によると、装置内にある縦10センチ、横5センチの電極の表面には、電気を作る細菌がすみついている。室温が25度と高めに設定されているのは、細菌が元気に動けるようにするためだ。
縦1メートル、横45センチの電極が入った「セル」を五つ重ねた大型装置なら、2~3ワットになる。スマートフォンなら5時間ほどでフル充電できるという。
2022年1月に公表したところ、30件以上の問い合わせがあった。同社によると、食品会社や工場のほか、リゾートホテルなど「環境意識の高いお客様」が多かった。
まず20年代半ばごろまでに、飲み物の残りなどから数十ワット程度を発電する設備を実用化。30年前後には、工場排水などから数千ワット程度を作れるように大型化したい考えだ。
ヒトなどの生物は、有機物を分解して電子を取り出し、体内に取り込んだ酸素にこの電子を渡すことで、生きるためのエネルギーを得る。ただ細菌には、酸素がないところでエネルギーを得られるものがいる。
「嫌気性細菌」と呼ばれる仲間だ。微生物発電は、この細菌を利用する。
「研究が盛んになったのは、ここ20年ほどです」と、東京薬科大の渡辺一哉教授は言う。
渡辺さんによると、きっかけ…