だまされ行った前線、「戦いたくなかった」ロシア側捕虜インタビュー
ウクライナ中部ドニプロにある捕虜収容所で、ロシア軍として戦った複数の捕虜が朝日新聞のインタビューに応じた。取材に応じたのはロシア人将校のほか、ウクライナ東部ルハンスク州の「ウクライナ人」の戦闘員。捕虜らは「金のために入隊した。戦争になると思わなかった」などと話した。
「ウクライナ人」の捕虜は、東部にある「ルガンスク人民共和国」(LPR)地域出身の戦闘員。LPRは2014年に親ロシア派武装勢力が占拠し、一方的に独立を宣言。昨年9月にプーチン大統領が一方的にロシア領に「編入」を宣言している。LPRの戦闘員はロシアの侵攻後、ロシア軍の一員として戦っている。
44歳の戦闘員は21年8月に入隊したが、「関心は金だけだった」という。建築作業員だったが現場の仕事がなく、生活に困っていたという。
昨年2月にロシアが侵攻すると、上官から「軍事訓練」と言われ、戦闘経験もないまま前線に送られた。
「行ったら本当の戦争だった。そうなると、戦う以外に自分にできることはなかった。戦いたくなかった」
ただ、「自分が育った地域がロシアに支配された時、何ができるか。一般人にあらがうすべはない」と付け加えた。「入隊を後悔しているか?」の問いに、目を閉じてうなずき、「とても」と付け加えた。
ロシア人将校は「戦争の大義は明確ではなく、私にはわからない。私は命令に従うだけだ」と答えた。
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記者は取材に先立ち、収容所を管理するウクライナ保安庁側に対し、取材に応じる意思を捕虜本人に確認するよう要請した。取材時にも直接本人に意思を確認し、同意を得た。捕虜の人道的扱いなどを定めた「ジュネーブ条約」に抵触しないよう、赤十字国際委員会にも問い合わせ、顔と氏名を出さないようアドバイスを受けた。(ドニプロ〈ウクライナ中部〉=杉山正)
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