ウトロで人権講座、宇治市が初企画 差別や歴史学ぶ
在日コリアンが多く住む京都府宇治市のウトロ地区で7日、市が初めて人権講座を開いた。特定の民族への差別的なヘイトスピーチのほか、2021年夏には地区で放火事件があった。外国人の人権を考えてもらおうと企画した。
ウトロは戦時中の飛行場建設をきっかけに在日住民の集落になった。地権者に土地明け渡しを迫られたが、市民や韓国政府の支援で一部を買い、市などが整備する公的住宅2期棟(12戸)が3月にできる。希望する全住民が5月には入居し、整備はほぼ終わる。残る家屋は年内にも取り壊され、更地が増えていく。
昨年4月にできた「ウトロ平和祈念館」の金秀煥(キムスファン)副館長(46)がこの歴史を紹介し、「差別され、かわいそうな在日住民を表現するのではなく、人権と平和の価値観を共有する希望があると伝える施設。高校生が映画を撮ったり、地区の模型を作ったり、若者が多く訪ねてくれる」と希望を語った。
市内外の約40人が人権講座に参加し、館内や地区を見学した。
長岡京市立中学の教諭、佐藤桂輔さん(30)は2度目の見学。「それまでウトロを知らず、タブー視された感覚もあった。教員が正しい人権感覚を持つ必要がある。大人も子どもも自分から学び、出会いに来ることで視野が広がる」と話す。奈良市の男性(74)は「在日の同級生がいて差別問題に関心がありながら、関われなかった」と明かした。
宇治市の主婦(73)は約30年前、中学校の保護者会で「差別される気持ちが日本人のあなた方にわかるか」というウトロ地区の保護者の言葉を聞き、涙が出た。「ウトロの子と当時交流があり、関心があった。参加してよかった。差別は人間として許せない。友人にも広げたい」と話した。(小西良昭)