半導体戦争と台湾有事 「シリコン・シールド」は米中のどちらを阻む

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ワシントン=榊原謙
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 家電からロケットまで、あらゆる機器に不可欠な重要部品、半導体を巡る米中の争いが激しさを増している。両国間で揺れる台湾に生産が偏る不安定さに加え、軍事力にも絡むことが事態を複雑にしている。近著「チップ・ウォー」で半導体の歴史を描いた国際史家のクリス・ミラーさんに、現代の半導体戦争について聞いた。

 ――半導体の歴史を描いた著書が、米国でベストセラーになっています。なぜ今、半導体に注目が集まるのでしょうか。

 「二つの理由があると思います。一つは、パンデミックによる供給制約です。半導体が、スマートフォンやパソコンだけでなく、車や皿洗い機、電子レンジにまで使われていることを多くの人に知らしめました。いかに経済が半導体に依存し、誰にとっても重要であるかを明らかにしたのです」

 「もう一つは、米国と中国の問題です。テクノロジーをめぐる両国間の緊張が高まるにつれ、それは半導体を中心としたものになってきました。緊張の加速は、経済全体に様々な形で影響を与えかねません」

 ――具体的には、どういった危機が想定されますか。

 「この両国のライバル関係の中心には、台湾がいます。台湾は、最先端の半導体の9割を生産し、世界が毎年増やすコンピューターの処理能力の3分の1以上は、台湾産の半導体がもたらしています。こうした事実は、何か問題が起きたときのリスクが、いかに大きいかを明確に示しています」

 ――台湾有事による半導体の供給途絶リスクですね。

 台湾に半導体供給力があること自体が、台湾を軍事行動から守るはず……そんな「シリコン・シールド(半導体の盾)」説に、ミラーさんは独自の分析を加えます。

 「米アップル、アマゾン、グ…

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    佐橋亮
    (東京大学東洋文化研究所准教授)
    2023年2月15日11時19分 投稿
    【解説】

    とても良いインタビューです。新著の日本語版発売にあわせて、著者のサービス精神もあるのか、盛りだくさんです。本文を読むので事足りると思いますので、2点のみ。 まず、この本はかなり読みやすく、専門家のためのものというよりは一般向けを意識し

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    鈴木一人
    (東京大学大学院教授・地経学研究所長)
    2023年2月15日14時44分 投稿
    【解説】

    ミラーさんの分析は的確で、日本におけるいくつもの神話(例えば日米半導体協定が日本の半導体をダメにした)を破壊するだけの威力のあるコメント。しかし、シリコン・シールドの問題については、もう少し踏みこんだ話が出来るのではないかと考える。米国が対