守り継がれる「オシラサマ」とは? 「遠野」に息づく神様との暮らし
奈良美里
「オシラサマ」と呼ばれる神様がいる。それぞれの家で大切に守られてきた、東北地方に伝わる民間信仰だ。岩手県遠野市には今なお、70軒を超える家にオシラサマがいるとされている。
1月、遠野市綾織町の古い曲(まが)り家を訪ねた。馬の産地として知られる遠野に残る、母屋と馬屋が一つになった建物だ。
この家に住む菊池ケサさん(88)に案内され、家の奥にある黒い木の箱に入れられたオシラサマを見せてもらった。
木でつくられた全長25センチほどのご神体2体に、色鮮やかな布が幾重にもかぶせてある。ご神体の頭はそれぞれ、馬と、えぼしをかぶった人のように見えた。
普段は箱におさめて保管し、1年に1度、1月16日のオシラサマの祭日にあわせて箱をあけてお供えをする。
そして、「オセンダク」と呼ばれる新しい布を1枚ずつかぶせてきた。下の層には昔の人が着せた、色あせた古い布が残っている。
オシラサマが、この家にいつからあるのかは、わからない。ただ、子どものころから、母親が大切にしていたのを覚えている、と菊池さんは言う。
「1月16日に姉や親戚の子どもたちがオシラサマをおぶってね」
オシラサマは子ども好きな神…
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