第9回「公共」は波風立てぬことじゃない プチ鹿島さんがNHKに望む気概
「時事芸人」として活躍するプチ鹿島さん(52)は、新聞14紙を読み比べ、スポーツ、文化、政治と幅広いジャンルの時事問題を読み解く。様々な角度からニュースを見るのが大好きで、そのためには伝えるメディアごとの「キャラクター」を知っておくのが大切だと説く鹿島さんにとって、NHKのキャラクターはどう見えているのか。メディアごとの個性を是とするなら、報道機関の「中立」はどこにあるのか。そして求める公共放送の姿は。
ぷち・かしま
1970年生まれ。長野県出身。一般紙6紙、スポーツ紙4紙、夕刊紙3紙、信濃毎日新聞を読み比べている。朝日新聞デジタルのサービス「コメントプラス」のコメンテーターも務める。ラッパーのダースレイダーさんと続けている動画配信で、選挙現場を取材した企画を映画化した「劇場版 センキョナンデス」が2月18日公開。
――お笑い芸人になる前から新聞の読み比べを趣味にしてきたそうですね
視点が違うほどうれしくなっちゃうんです。野球場の一塁側と三塁側、ホームとビジターではお客さんの雰囲気が全然違う。相撲も東西南北で見え方が違う。同じ試合が全く違うものに見えるというのがたまらなくて。メディアリテラシーとかではなくて、根っからのやじ馬精神だと思っています。
学校や職場のうわさ話でもそうですが、うわさがあったら色んな人に聞くじゃないですか。なじみのある人に、この人はこういう感じのことを言うだろうなってキャラクターを知っている上で、情報を確認し合ったりする。
それはニュースでも同じことだと思っていて。
記者は僕らの代わりに現場へ行って、取材して、裏付けして、5W1Hを確認してくれる。ある意味、僕らの代理人でもある。さらに、僕が新聞やテレビを利用しているのは、子どもの頃から長い間読んで、見ていてなじみがあるからです。メディアごとの「キャラクター」が分からないと、なかなか自分のジャッジの要素には入れづらいんですよね。
最近で言うなら、毎日新聞がオフレコ取材での首相秘書官の差別発言を報じた。だけど読売新聞は社説で「オフレコ破りはちょっとどうなのか」と書いていた。じゃあその上で自分はどう思うか、を考えるのが好きです。
安倍さんに近い記者が……
――NHKの報道をどう見ていますか
NHKは公共放送として「公平・公正」「不偏不党」を掲げていますが、予算は国会の承認が要るし、会長の選出には与党、力を持っている人の考えが影響している現実があります。気になるのは、NHKのその「システム」です。
プチ鹿島さんは、自身も現場を取材してきた選挙の報道を引き合いに、NHKをはじめメディアの「中立」に疑問を投げかけます。同時に、NHKの現場に対する期待も。かつて久米宏さんが「あさイチ」に出演したことに感じた「気概」とは。
元々そのことに興味を持った…
- 【解説】
鋭く世相を読み解くプチ鹿島氏の評論に、私は信を置いています。読めば納得させられるからです。新聞14紙を読み比べた上で自身が思い考えたことを述べる、つまり客観性と主観性のバランスがとれたスタイルに、つい惹き込まれるんですね。ライトな語り口なん