第1回避けたいトランプ批判 「疑惑」問われたゼレンスキー氏が見せた機知

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キーウ=喜田尚
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 ロシアの侵攻を受けるウクライナを率いるゼレンスキー大統領。コメディー俳優という異例の経歴を持つ大統領は侵攻前に何をしたのか、そして侵攻後、どのように戦時の指導者に変貌(へんぼう)していったのか。長年、東欧、旧ソ連の取材を続けてきた記者が分析する。

 2020年2月15日、ドイツ南部ミュンヘン。毎年この時期に開かれる「ミュンヘン安保会議」に招待されたウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領(45)は、主会場のホテルに隣接する小ホールでトークイベントに臨んでいた。

 司会兼インタビュアーの米CNNの看板女性キャスター、クリスティアン・アマンプール氏が真っ先に尋ねたのは、当時のトランプ米大統領の「ウクライナ疑惑」についてだった。

 トランプ氏が19年夏、就任したばかりのゼレンスキー氏との電話協議で、ウクライナへの軍事支援と引き換えに政敵のバイデン現米大統領の息子に関連する疑惑捜査を求めたとされるのが「ウクライナ疑惑」だ。米国では共和、民主の両党の対立がエスカレート。10日前に共和が多数派の上院の弾劾(だんがい)裁判で無罪の判決が出たばかりだった。

 答え方を誤ればトランプ氏への批判になる。一方、同氏に迎合的と受け止められれば、来たる米大統領選で政権を握るかもしれない民主党の失望を買う。ゼレンスキー氏は、最大の支援国である米国の政争のはざまに落とされていた。

紛争めぐり、迎えた最初の正念場

 どのようにこの場を切り抜けるのか。ゼレンスキー氏が発する言葉を、会場を埋めた100人ほどの外交官、国際機関幹部、記者らは固唾(かたず)をのんで待った。

 ゼレンスキー氏は1990年代、旧ソ連圏が対象のユーモアコンテストを経てコメディー俳優として有名になった。ロシアが南部クリミア半島を一方的に併合した14年のウクライナ危機の翌年からテレビドラマで、普通の教師から突然選ばれて奮闘する「ホロボロジコ大統領」を演じた。19年の大統領選に立候補すると、選挙戦中にドラマの新シリーズが放送され、現実と虚構がない交ぜの選挙戦が話題になった。

 ミュンヘンでのイベントで…

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