第18回お金=発言力は絶対なのか 株主を区別し「会社にデモクラシーを」

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聞き手・加藤裕則
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 株式会社の最高意思決定機関である株主総会は、1株=1票(議決権)で運営される。しかし、この仕組みは「絶対」ではない、と訴える研究者がいる。早稲田大学の上村達男名誉教授だ。株主総会の議決のすべてが、出せるお金の多い、少ないで決まるのは危険だという。どういうことなのか、詳しく聞いた。

 ――1株=1票というのは、当たり前の権利だと思っていました。

 「会社の活動は環境、消費、人権など人間社会と深く結びついています。議決権はその会社の活動を左右します。1株を1人の人間が持つときもあれば、その株を1人で10万株を買う場合もあります。この場合10万株を買えた人に10万人分の発言権を与えるのはあまりに過剰です。議決権は個人を想定した人格権の一つで、配当などの財産権と分けて考えるべきです。そうでないと、企業社会はお金が支配することになり、それを全面肯定してしまうことにもなります。株主の属性を考慮することが必要なのです」

 ――属性とはどんなことですか。

 「モノ言う株主とされる投資ファンドのことを考えてください。モノをつくらず、一般社会に対するサービスも提供しません。消費者や従業員といった存在を意識することも少ないと思います。こうした株主と、市民や個人株主とを同等に扱うべきではないと考えます。このような株主の属性を問題にすべきです。かつて総会屋がばっこした時代がありましたが、そのころ、裁判所は総会屋というだけで何を言っても否定し続けました。まさしく株主の属性が問題とされたのです」

 「一方で、ファンドの中には年金基金などたくさんの個人から預かったお金を運用し、預けた個人に対する非常に厳格な責任が厳しく問われるケースもあります。こういうファンドはその義務と責任の重さ故に、個人と同視しても良いと思われます。特定の大金持ちのために運用しているに過ぎないかどうかは重要です」

フランスでは「2年間で議決権が2倍」も

 ――それをどうやって調べるのですか。

 「株主の素性を調べる制度が…

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