第60回「青から黒」に変わる世界 元航空幕僚長が読み解く中国気球のナゾ

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牧野愛博
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 米国が4日、中国の気球を「監視用」だとして撃墜しました。米国はさらに三つの飛行物体を撃墜しましたが、これまでのところ監視活動との関連を示す証拠は見つかっていないといいます。F4戦闘機のパイロットだった杉山良行・元航空幕僚長は最初の気球について「中国は電波を収集していた可能性が高い」と指摘する一方で、この高度帯が注目を浴びている現状も指摘します。

 ――中国の気球は何をしていたのでしょうか。

 米国の発表によれば、中国の気球は中国・海南島から打ち上げられ、グアム周辺に到達した後、気流の関係で北米に向かったとみられています。米軍基地の上空を飛んでいたという情報もあり、主に軍事情報を収集していたと思います。

 中国の気球は映像や電磁波、通信情報などを集めていた可能性があります。今回の気球は高度18キロ(約6万フィート)から同20キロ(約6万6千フィート)の空域を飛行していました。「電波は距離の二乗に比例して減衰する」という法則があります。静止軌道衛星で高度3万6千キロ、低軌道衛星でも高度2千キロですから、気球は低軌道衛星よりも1万倍強い電波を収集できる環境にいたことになります。

気球に目をつけたのは「先進的」

 最近、米国のテキサス、フロ…

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