「新しい戦前」危険と思っても… 画像が映し出すサイレントな姿
ロシアがウクライナに侵攻して、2月24日で1年を迎える。情報デザインを研究する東京大学大学院の渡邉英徳教授は、「戦争の可視化」に取り組む。過去の白黒の写真を人工知能(AI)と共同作業でカラー化し、ウクライナの衛星画像と3Dデータをデジタル地図にまとめる。戦争のどんな姿を見せようとしているのか。渡邉さんに聞いた。
――ツイッターで、カラー化した過去の写真を「●●年前の今日」として投稿しています。多くは戦争にまつわるものです。
「もうライフワークのようなものです。写真をカラー化しはじめて7年になります。2010年ごろから広島・長崎の原爆資料をデジタル地図上にまとめる『デジタルアーカイブ』を公開していますが、モノクロ写真にはなかなか目を留めてもらえなかったんです。写真には様々なものが写っているのに、目を滑ってしまい『昔の写真』という印象で終わってしまっているようでした。そこで考えたのが、日頃からカラーの映像に目が慣れている我々は、白黒の写真に写されたできごとを、『自分ごと』として感じにくくなっているのでは、と」
――それで、写真に色を付けることを始めたのですね。
「AI技術と資料、識者のコメントなどを生かして写真を着彩し続けています。今年の1月27日には、『78年前の今日』としてソ連軍によるアウシュビッツ強制収容所の解放を捉えた写真をツイートしました。戦争には両面があることが伝わればと考えました。いまウクライナに侵攻しているロシア、つまり以前のソ連は、収容されていたユダヤ人にとっては『ヒーロー』でした」
「あわせてツイートしたのが、強制収容所で亡くなった『アンネの日記』のアンネ・フランクさんの写真です。5歳のころのカラー化写真には、大きな反響がありました。白黒の状態では『歴史上の人物』に見えてしまう。しかしカラー化された彼女は、今でもオランダに住んでいそうな、緑色の瞳の少女です」
――この写真を見ると、その命を奪った戦争のことを考えさせられます。
「そうですね。過去のできごとを現在に接続することが目的です。楽しいことも悲しいことも含めてです。しかし、最近は、『過去』の戦争と現状を重ねやすい時代になってしまっているようです。例えば、アメリカに飛来した中国の気球を米軍機が撃墜したというニュースが、直前の1月10日に『78年前の今日』として投稿した旧日本軍の『風船爆弾』の写真とオーバーラップします。実際、この『風船爆弾』も米軍に撃墜されたものです」
過去の戦争と重なる「今」
――昨年末のテレビ番組「徹子の部屋」で、タモリさんも、今年は「新しい戦前」になるのではと話しました。
「ウクライナの戦争もコロナ…
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